Ochikubo-21
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
あこきは夫の帯刀の文と一緒にあずかった右近の少将様のお文を姫様にお渡ししました。「おあずかりしたものです。昨日の夜はいったいどうしたのか寝入ってしまい朝になっていました。でも何を言ったところでお信じにはなりませんでしょうね」とおちくぼ姫に疑われても仕方がないけれど、それでも「こんなことになるとわかっていたら」と必ずああもしたしこうもしたと姫に訴えましたが何も答えてはもらえません。姫が横になったまま動かれる気配もないので、あこきはたまらず「やっぱりお疑いでらっしゃるのですね。それはありませんわ。あれだけおそばにいたものを、姫様を裏切るなどありえません。姫様のことを思えばこそ、わたくしは付き添わんとみながこぞって行きたがるお供も辞しましたものを、その思いをくんでいただけない、わたくしの言葉も耳には入らないとなれば、もうご用はないものとおひまをいただくのがよいかと。おいとまを願いとう存じます」と泣き出す姿に、姫様もかわいそうに思われて、「なんにせよ、あのように押し入るなどもってのほか、まさかあんな暴挙に及ぶとは思いもよらず、どうしてこんなことにと泣くうちに、こんなみっともない着物姿をさらしてしまってどうしようもなく情けないの。母上様が生きてらしたらきっとこんなみじめな思いはしてないわ」と号泣されました。「そりゃあお母上様がいてくだされば絶対に姫様にこんな思いはさせるはずがありません。でも姫様、北の方様のいじめはそりゃあひどいものだと右近の少将様もご存知のはずですからお気になさらずともよろしいのではないですか。こうなったら少将様の姫様へのお気持ちが本物であったならこんなありがたいことはないように思われますけれど」とあこきは懸命に姫様をおなぐさめします。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「おちくぼ姫に疑われても仕方がないけれど、それでも「こんなことになるとわかっていたら」と必ずああもしたしこうもしたと姫に訴えましたが(中略)「……それはありませんわ。あれだけおそばにいたものを、姫様を裏切るなどありえません。」という箇所の古語を取り上げます。
「おしはかりはことわりなれど、「このけしきをだに見てはべらば」と、よろづに誓ひゐたれど、「(中略)心憂く、ここらの年ごろ仕うまつりはべりて、かくうしろめたきことはしはべりなむや。」
おしはかり
当て推量・推測
ことわり
①ものごとの道理・筋道②判断・裁定③説明・言い訳・理由④謝罪⑤拒絶・辞退⑥もっともだ・道理にかなっている
けしき
ものを直接目で見た感じ・ようす⇒(人間の)①顔色・表情・そぶり・態度/(自然界の)②景色・ようす・ありさま・情景
①→③意向・意中・内意
①→④機嫌・好意・愛情・寵愛⑤きざし・兆候
②→⑥ふつうと違ったおもむき・異様な感じ⑦いささか・少し・一端
だに
①せめて○○だけでも②○○さえ
よろづ
①万・多くの数・種類が多いこと・いろいろ・さまざま②すべての事・万事③何事につけても・万事・いっさい・すっかり
誓ふ
神仏にかけて固く約束する
年ごろ
①これまでの何年かの間・数年来・長年②年格好・年配
仕ふ
①身分の高い人のそばで、その人の用をする・つかえる②官職につく・仕官する・役人として勤める
うしろめたし(←うしろめたき)
人を後ろからみて気がかりである⇒①気がかりだ・不安だ・心もとない②気が許せない・油断がならない/③気がとがめる・やましい・うしろ暗い
あこきがおちくぼ姫に一生懸命、身の潔白を信じてもらおうと言葉を尽くしている箇所です。まず、おちくぼ姫があこきのせいでこんなひどい目に遭ったのではないかと思ってしまうのも無理はないと姫のあこきに恨みに思う気持ちを受けとめた上で、でももし本当にわたくし(あこき)がよからぬたくらみを事前にわかっていれば私はきっと姫様のために、そのような悪だくみを防ぐ手立てを間違いなく講じておりました、とあこきの姫に捧げる誠(まこと)の思いを伝えて、なんとか信じてもらおうといろいろ言葉(に真心)を尽くしたのではないでしょうか。でも反応がないので、たまらずあこきはさらに言葉を重ねて、こんなにも長い間わたくしは姫様に尽くし続けてまいりましたのに、それなのに、そうやってずーっと誠心誠意、一度たりとも姫様を苦しめるようなことなどしたことはないはずなのに、どうして今、姫様にやましさを感じるような行為に及ぶでしょうか、そんなこと、あるはずがないじゃありませんか、と理詰めで姫の誤解を解こう、わかってもらおう、としているようではないでしょうか。あこきが姫にこんなひどい目にあわせる理由があるか、ないだろうと、だからあこき(の言葉)を信じてほしい、と姫に必死で理を説いているようではないでしょうか。
平安文化のあれこれ
おちくぼ姫は(実の)お母さんのことを口にしているようです。生きていてくれたら、姫の着物のことなどもちゃんと面倒見てくれただろうな、あたしはきっとこんな情けない思いはしていないだろうな、と思っているようです。頼れる人がいなくて心細い、いつもはじっと我慢しているけれど、こういうときに思わず本音が口をついて出てしまう、そうした様子がうかがわれるでしょうか。それにしてもあこきはどうやら北の方の魔の手から逃れられるのであれば、右近の少将を当てにしようではないか、と考えているようではないでしょうか。どういう人であれ、北の方よりはマシだろうということでしょうか。つまり、右近の少将がおちくぼ姫を正式に妻とし、なおかつこの北の方が牛耳っている中納言邸から姫が抜け出せるなら、それが良い、(とりあえず、さしあたって)望ましいではないか、と思っているのではないでしょうか。理屈はそうなのでしょうが、果たして姫の気持ちはどうでしょうか。恐怖を味わわされた相手に、恋とか愛とかそういう感情にはほど遠かったりしないでしょうか。それとも姫でも、今のみじめさと、別のみじめさと、どちらがマシか、というより、どちらの方が明るい未来が開けそうか、といった打算的な考え方ができるのでしょうか。で、たくましく、したたかに、あこき流で、最善にはかけ離れていても、それでも現状よりはマシじゃあないか、という可能性に賭けていくのでしょうか。もしかしたらおちくぼ姫は人生の分岐点に立っていたりするのでしょうか。
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Akoki presented Princess Ochikubo the letter from Ukon’no Shoushou which she received together with the letter from her husband, Tachiwaki. “I have a letter for you, my dear Princess. Last night I fell sound asleep until morning against my will. But you will not believe me no matter what I say." Admitting that naturally Princess Ochikubo should suspect her involvement, Akoki appealed to the Princess in vain, affirming that she would have never ever failed to do this and that if she had caught any sign of such plot and unbearably facing the dead silence and the still doll. “You’re having a suspicion against me as I fear. That’s a wrong guess. How could I betray you, your Highness, after I’ve been serving you for years. It is for you that I’ve declined to go despite the fun which everyone should enjoy. If you would not take my sincere heart… If you would not hear my true words… You would not want me and I should disappear from your sight. I humbly ask your permission for my leave forever," said Akoki, bursting into a cry. Feeling pity for the desperate best friend, the Princess let her misery out in a great lament; “It does not matter whether or not you were involved, how could I tolerate such an intrusion? It has never ever occured to me that anyone would resort to such a violent means. First I wondered what I have done to cause such a catastrophe in pouring tears and then I’m filled with shame at the fact that this disgraceful appearance has come into the view of a total stranger. If my dearest mother was alive, I would not go through this ignominious incident." “That’s right! Your late mother would not have you undergo such a reprehensible outrage in any way. But your Highness, Ukon’no Shoushou should have known the brutality of your stepmother against you. If I were you, I would not care. Now that he met you, I would be grateful if Ukon’no Shoushou will show true love for you," said Akoki, making a strenuous effort to find solace for her treasured Princess.
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