Ochikubo-20

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

言いつけておいた帰りの牛車が来たと聞いて帯刀はあこきに姫様のお部屋へ行き知らせてきてくれと頼むと、「今ごろ行かせるなんてどういうことよ。まるであたしが全部お膳立てしたみたいになるじゃない。なんて意地が悪いのよ、あんたは。姫様に合わせる顔がないわ」とあこきの怒りがとけるきざしもない。そんな妻が帯刀には愛おしくてたまらず、思わず笑みをこぼしながら「お前には俺がいる。お前は俺といろ」と優しく語りかけ、それから右近の少将に聞こえるように姫様の部屋の外でせきをして知らせました。中では起き上がった少将がおちくぼ姫にふとんをかけてやりましたが、薄着で寒そうなので、身にまとっていた着物をするりと取って姫の体をくるんでやり、立ち上がると部屋の外に出て行きました。その間も姫はずっとただただ恥じ入るばかりで身動き一つされませんでした。
あこきはただもう姫様に申し訳ないやらたまらない思いで、おそばに参りたい、参るべきだとの思いと怖くて姫様にとても会えないと引いてしまうものとのせめぎあいにさいなまれていましたが、やがて意を決して姫様のお部屋に足を運びました。まだ横になられたままの姫様になんとお声がけしたらよいものかと考えあぐねていたら、夫の帯刀と右近の少将から文が届きました。腹立たしいことに「お前は一晩中怒っていたね。俺は本当につらかったよ、俺のせいにされて。もし少将様のせいでたとえほんのわずかでも姫様がおざなりにされるようなことがあれば、俺はもうお前には会わない。だってきっとあんなもんじゃすまないことになるだろ。まあもともとお前は怖いところがあったけどな。姫様にも俺は本当にひどい奴だと恨まれてるんじゃないのか。だからもうこんなことはしたくないんだけどな。でも、お役なんでね。少将様から姫様にお文だ。どうかお気持ちをお聞かせいただきたい。男と女は縁だろ。考えても仕方ないぞ」と書いてありました。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「あこきはただもう姫様に申し訳ないやらたまらない思いで、おそばに参りたい、参るべきだとの思いと怖くて姫様にとても会えないと引いてしまうものとのせめぎあいにさいなまれていましたが、やがて意を決して姫様のお部屋に足を運びました。」という箇所の古語を取り上げます。

「あこき、あいなくいとほしけれど、さてもはいりゐたらねば、参りて見る。」

あいなし(←あいなく)
(不調和を意識するところから生じる複雑・微妙な)違和感を表す⇒①筋が通らない・不当である・よくない②どうしようもない・無益だ・むだだ③おもしろくない・つまらない・気にくわない・興ざめだ④わけもなく・むやみに・ただもう

あいなくいとほしけれど=(あこきは)わけもなく・ただもう(おちくぼ姫を)見ていてつらく気の毒であるけれども

さても
①そうであっても・そのままの状態でも・それでも②そのまま・そうして③それにしても・それはそうと・ところで④ほんとにまあ・それにしてもまあ

いる(←いり)
①(外から)中にはいる②(日や月が)沈む③ある環境・状況などにはいる・(とくに)仏門にはいる・(后などとして)宮中にはいる④必要である⑤ある状況・時間に達する・至る⑥深くはいりこむ・心にしみる⑦いらっしゃる・おいでになる⑧すっかり○○する・ひたすら○○する⑨中に入れる⑩力をこめる・心をこめる⑪受け入れる・中に入れる

さてもはいりゐたらねば=そうして(いて)ずっと(姫様の部屋の)中にはいらないままでいたところ

あこきの気持ちとしては、自分がずっと姫様についてさえいればこんなことにはなっていないのに、と自らを責め後悔する思いがないでしょうか。ただ実際にはおちくぼ姫は突然私室に入り込んできた右近の少将に恐ろしい思いをさせられたという現実があるわけで、そこにはひたすら姫を気の毒に思う気持ちがあるのではないでしょうか。同時に、こうした事態になったことで、姫様に自分はどう思われているだろうか、という不安だったり、あこき自身も向き合いたくない現実というものもあるのではないでしょうか。そうすると、あこきとしてはなんとも姫に会いたくないというか、どんな顔をして会えるというのだろうか、というものとか、つらい思いをしているであろう姫のそばに行きたいし、行くべきだし、でも姫に果たして受け入れてもらえるのだろうか、拒否されたらどうしようとか、そうしたいろんな思いがぐるぐるとあこきの中で巡っていないでしょうか。そうすると、頭と心は動きまくっていて堂々巡りかもしれないけれど、でも体は動かない、動けない、行動に移っていかない、という状態だったりしていないでしょうか。そうした心の葛藤がここには描かれているのではないでしょうか。(結局最後にはあこきも覚悟を決めたのか、勇気を出しておちくぼ姫のもとに行ったようではないでしょうか。姫様の味わわれた思いを考えれば、私のこうしたものなど大したものではない、などといった思いもあったのでしょうか。)

 

平安文化のあれこれ

どうでしょうね。帯刀は運命とか宿命で片付けようとしているようですけれど、あこきやおちくぼ姫にしてみたら。それは違うでしょ、となりませんかね。なんとも釈然としない展開ですね。でも、これこそ道長が定子(や実の娘の彰子)に味わわせた思いとか感じさせたものなんじゃあないでしょうか。こういうスッキリしない無茶苦茶な理屈を押し付けられて従わされる、心にモヤモヤしか残らない、そうしたイヤァな感じをお気軽な物語の体を装いながら再現しているのではないでしょうか(源順は)。ただ、右近の少将に課せられた使命は、(定子がモデルの)おちくぼ姫を幸せにする王子様であり、定子の兄弟で若くして死に追いやられた道頼の無念を晴らすことでもあり(道頼が生きている間にできなかった社会的成功とかを物語の中だけでも実現してやるとか)、その中で道長の所業も(ついでに)暗示しているのでしょうか。なんにしても、ドン引きじゃないか、どういうことよ、というものは(たぶん)すべて、道長を暗示していたりするのではないでしょうか。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。

 

注意!

このコンテンツはこのサイトでのみ公開いたします。

このコンテンツの著作権はすべて著作者が保有いたします。

このコンテンツは閲覧えつらん以外の利用をすべて禁止いたします。

 

【お願い】

このコンテンツは無料で閲覧いただけますが、このページ末尾にある “お心付け" ボタンから、ぜひお心付けをいただけませんでしょうか。100円からお願いしております。ご検討いただけましたらありがたく存じます。

 

また、最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか([注意!]おちくぼ物語(英語サイト)」(https://jacl-en.it-is-the-tale.com) の English version と同じものです)。(なお、毎回英語版をご購読いただいた場合には高額となるおそれがあります。またいかなる場合も返金には応じられません。またご購読いただいた英語版にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきいただけますようお願い申し上げます。)

おそれいりますが英語版は有料で公開させていただきます。

Posted by preciousgraceful-hm