Ochikubo-13

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

めったにない遠出に浮き足立ってにぎやかに邸中の者が行ってしまうと、物音一つせず寂しくなったけれども、あこきは気兼ねなくおちくぼ姫と二人だけでくつろぎ楽しんでいたら、夫の帯刀から「お前は遠出についていかなかったというのは本当か。なら俺の出番だろ」と会いたい思いを伝えられて、「姫様のお加減がおもわしくないようで、おひかえあそばされたというのに、ついていくわけないでしょ。姫様のお心をなごませ楽しませられるのであれば来てもいいわよ。そういえばお見せできる絵があるとか言ってたわよね。それ、見たいわ」と返答しました。以前帯刀が「絵なら帝に入内された右近の少将様の御妹君がいろいろお持ちのようだから、きっと少将様が見せてくださるよ」と言っていたことを思い出したのです。帯刀が妻のあこきから来たその返事を右近の少将に見せると、「お前の細君は書にひいでているのだな。それにしても絶好のチャンスだな。中納言邸へ行けるか。わたりをつけろ」と命じました。すると、「絵画集を一冊お借りしたいのですが」と帯刀が頼むと、右近の少将は「俺が姫に会えるようになったらな」ともったいつけて応じようとしないので、「まさしく今こそその折かと」と進言しました。これまで返事一言すらもらえてこなかった上に、まだ会えるめども立っていないものを、まだ絵を贈る気持ちにはなれないなと思われたのでしょうか、右近の少将は自室に戻り白い紙に、悔しげに小指をかんでいる絵を書いて、「ご所望の由、ずっと無視されてきたのですよ、その私の気持ちがわかりますか。絶対にいい顔などするものか、絵だってただでは見せられるか。そんな思いをしたためたものです。まるでだだっ子と変わらなくても」と添えられました。この少将直筆の絵と文を帯刀はあずかり、中納言邸へ向かう前に、少将の乳母でもある自らの母親に、「上等な盛り合わせを一かごお願いします。すぐ取りにやらせます」と伝えて出かけた。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「めったにない遠出に浮き足立ってにぎやかに邸中の者が行ってしまうと、物音一つせず寂しくなったけれども、あこきは気兼ねなくおちくぼ姫と二人だけでくつろぎ楽しんでいたら、夫の帯刀から「お前は遠出についていかなかったというのは本当か。なら俺の出番だろ」」という箇所の古語を取り上げます。

「ののしりて出でたまひぬれば、かいすみて心ぼそげなれど、わが君とうち語らひてゐたるほどに、帯刀がもとより、「御供に参りたまはずと聞くは、まことか。さらば参らむ」」

ののしる(←ののしり)
大きい声や音を立てる⇒①大声で騒ぐ・騒ぎたてる
②評判が高い・盛んに評判が立つ・うわさをする⇒③勢力をふるう・威勢がよくなる・時めく
④大きい音を立てる・大きい声で鳴く⑤大騒ぎして○○する・大声を立てて○○する⑥罵倒する・どなりちらす

出づ(←出で)
①(中から外へ)出る②出発する③(隠れていたものが)表面に現れる・人に知られる④離れる・のがれる⑤(表面に)出す・現す⑥出る・出すの意を添える

ののしりて出でたまひぬれば=大騒ぎして出発したので・から

かいすむ(←かいすみ)
かい+すむ
かい(掻い)=語調を整えたり、意味を強調したりする
すむ(澄む)=①(濁りのある液体が)すき通るようになる②くもりがなくなる・明るく清らかになる③物の音がさえる・響きわたる④しっとりと物静かである・上品である・あかぬけている⑤(脱俗の念で)心が静かに安らぐ・心がすっきりする⑥清音の発音をする

心ぼそし(←心ぼそ)
①頼りなくて不安なさま・心細い・心配だ②さびしい・ものさびしい

かいすみて心ぼそげなれど=しっとりと物静かでさびしいさま・ようだけれども


①国家を統治する人・天皇②主人として仕える人・主君③身分の高い人をさしていう語・お方④(「人名・官名の君」という形で)敬意を表す⑤遊女・遊君⑥あなた

語ふ
①互いに語り合う・親しく語り合う・語らう⇒②親しく交際する・懇意にする
②⇒③(男女の場合)契る・交際する
②⇒④相談する・頼みこむ
②⇒⑤説得する・自分の仲間に引き入れる

わが君とうち語らひてゐたるほどに=あこきの主人(であるおちくぼ姫)とすっかり親しくずっと語り合い続けているとき・ところに

帯刀がもとより=帯刀のところから

御供に参りたまはずと聞くは=主人(中納言や北の方、三の君)に付き従って行くことに参ることをなさっていないと聞いて知っているのは

まこと
「真+事・言」の意⇒①真実(である)・偽りのないようす・事実・真理・本物②誠実(である)・偽りのない気持ち・まごころ
③ほんとうに・まったく
④そういえば・たしか・ほんとうにそうそう

さらば=さ+(あ)らば=そのよう(本当で)(な状態)であるならば

 

平安文化のあれこれ

平安時代には男女を問わず和歌の教養は必須のようでしたけれども、おちくぼ物語のヒーロー(王子様)は絵も描き慣れているのでしょうか。たしかに和歌に挿し絵みたいなものが添えてあったらよりいっそう粋になるかもしれませんね。しかもここで右近の少将は漫画っぽい笑いを誘うものを思いつくままにいとも簡単に仕上げてしまっているようではないでしょうか。(そうした方面で)遊び慣れているとも言えるのでしょうか。そうやって遊び慣れている(かもしれない)位の高いお金持ちの息子が、遊ぶどころか寝る暇すらないほど働かされしいたげられているおちくぼ姫を、恋の相手に、ひいては妻に、と考えているんですよね。おもしろい組み合わせでしょうか。帯刀とあこきは似た者同士という印象が強いように思われましたが、この二人は真逆のタイプなんでしょうか。ただ、おちくぼ姫も本来は(お母さんが生きてさえいれば)高貴な家柄の姫様なわけで、そういう意味では右近の少将とも釣り合いがとれるというか引けを取らないんでしょうか。あくまでも現在の境遇が遊びを許さないというだけの話で、血筋はたぶん北の方なんかよりもはるかに上とか良かったりするのではないでしょうか(だからこそ余計にイジメられるんでしょうか)。どうなんでしょうか。遊びを知らないおちくぼ姫が、遊び慣れている右近の少将から、いろんな遊びを学んでいくんでしょうか。それなりに影響を受けるのか、それともあくまでも姫らしさを保ち続けるのか。ところで、おちくぼ姫のお母さんって、どうして死んだんでしょうかね。藤原道長みたいなのを見てると、もしかしたら北の方はどうなんだろうと、思ってしまったりするのは、行き過ぎでしょうか。いや、怖い。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。

 

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Ochikubo-Hime (Princess Ochikubo)

In the deserted house of Chunagon after cheerful great excitement for a rare trip, Akoki, a little uneasy with unusal tranquility, has been relaxed and enjoyed the two of Princess Ochikubo and her without reserve. Then her husband, Tachiwaki, wants to see her, saying “Have you not gone there? You should want to see me!" “Don’t be swollen. I’m here for my Princess. She refrained from a long journey considering her health state. You may come if you can comfort and amuse her. You said you can bring pictures for my Princess. Then, do it," Akoki answered. She remembers that Tachiwaki once told her that Ukon’no Shoushou will surely present entertaining pictures to Princess Ochikubo from among those of the Empress as she is a sister of Ukon’no Shoushou. Upon seeing the letter from Akoki to Tachiwaki, Ukon’no Shoushou said, “Your wife writes well. This is a perfect chance for us. You can go to the Princess, can’t you? Get in touch with her." In response to this request, Tachiwaki asked his master for a volume of picture collections. But Ukon’no Shoushou would not meet his demand, saying “I will show her any one when I see her." “This is just the very occasion," said Tachiwaki, implying that his master would have a direct contact with her. However, would Ukon’no Shoushou not like give such a picture as he has been denied all along by and no promise has been secured from the Princess? In his own place, the future Prince of Princess Ochikubo drew a mortified face biting a pinky on a white paper and added the following: “I heard you want to see pictures, but I have been ignored without one word given. Do you see what I feel? This painting shows my real stings ; I would never ever show my smile to you, nor would I ever show you pitucres of your want. Even if such a behavior is unruly." WIth this letter from his master to the Princess, Tachiwaki, before leaving for the house of Chunagon, called on her mother who is the nurse of Ukon’no Shoushou for a basket of scrumptious fruits, sweets and foods, telling that he will send for it soon.


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Posted by preciousgraceful-hm