Ochikubo-14

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

中納言邸に着くとすぐにあこきを請うた帯刀に、まず「絵がないじゃない」と手厳しいも、これにひるまず「ほら、少将様のお気持ちだ。姫様におとりつぎ願いたい」と文を差し出すと、「あら、やっぱりうそだったの」と冷たくあしらいながらも、あこきはつき返したりせず、ちゃんと姫様にお渡ししました。することもなくのんびりしていた姫は、右近の少将から届けられた文をご覧になり、何のことだか要領を得ず、「絵とはなんのことかしら。まさかお願いしたの」とあこきにおたずねになられると、「夫が姫様にご覧いただきたい絵があると申したことがあったので、お言葉に甘えてその絵をぜひにと頼んでみたのを、どうやら右近の少将様はお読みになられたのでしょうかね」と答えたので、「なんてこと。お見通しでらっしゃるでしょうね。わたくしのようなものが楽しみを持とうなどおこがましいこと」とおっしゃり、お気持ちが沈まれたようでした。
あこきはまた帯刀に請われて、姫様を一人残して夫に応じ、どうやら心配してくれているのか、中納言邸に誰がいるのかなど邸の様子を尋ねられ、「人気のない屋敷は不安だろ。頼んできたから、盛りかごを持ってこさせるよ」と気をきかせてあれこれ世話を焼かれるままにしていたら、夫はどうやらあこきにやるという盛り合わせを姑に用意させたようで、大小の盛りかご二つに文が添えられて届けられました。嫁のあこきだけでなく、そのあこきのそばで仕える年若い侍女までおもんぱかってのことのようでしたが、あこきにはこうした盛り合わせにはふさわしくないと思うような食べ物まで含まれていたので、夫の帯刀のしわざだろうと問い詰めても、「俺じゃないよ。お袋の気持ちをお前が余計なおせっかいだと迷惑がっているんだろ。おい、こっちはお前のだ」と侍女にと入れてあったものを取らせました。それからあこきと帯刀は仲むつまじく一緒に横になり、それぞれに右近の少将とおちくぼ姫のことを語り合いました。その夜は雨となり、これでは少将様はおいでにならないだろうと気がゆるんだ帯刀は寝てしまいました。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「「なんてこと。お見通しでらっしゃるでしょうね。わたくしのようなものが楽しみを持とうなどおこがましいこと」とおっしゃり、お気持ちが沈まれたようでした。」という箇所の古語を取り上げます。

「「うたて、心無しと見しられたるやうにこそ。人に知られぬ人は無心なるこそよけれ」とて、ものしげに思ほしたり。」

うたて
事態や心情が自分の意志とは関係なく進んでいくさま⇒異常なさまを嘆く気持ちを表す
⇒①なぜか非常に・どういうわけかひどく・なぜだかしきりに
⇒②いやなことに・情けなく・つらく・不快に・いとわしく⇒③異様に・気味悪く・いやに・変に
④情けない・いやだ・困った
⑤わけのわからない・ひどい・情けない

心無し
①思いやりがない・親切心がない②思慮分別がない③情趣を解しない・教養がない④思慮分別がないこと・思慮分別のない人・うっかり者

やう
①姿・形・ようす・ありさま②形式・様式・きまり③理由・事情・わけ④手段・方法・やり方⑤(前の事柄・状態をうけて)そのようなもの・そのようなこと・同じ類い⑥○○こと・○○ことには

心無しと見しられたるやうにこそ=思慮分別のない人だと気づかれてしまったことであるなあ

無心
①思慮の浅いこと・無神経なさま②風流心のないこと・また、そのさま③金銭や物品を他人にねだること・無理に頼むこと

人に知られぬ人は無心なるこそよけれ=世間の人とかかわりあうことのない人間(おちくぼ姫自身)は風流心のないことこそ適当である

ものしげ
不愉快そうである・不機嫌そうである

思ほす
お思いになる・お思いなさる

 

平安文化のあれこれ

平安時代でも嫁姑問題というのがあったのでしょうか。同居の例まであったのかどうかわかりませんが、あこきは食べ物一つでお姑さんに(というより夫にですが)怒っているようなので、嫁と姑という立場にまつわる問題は時代を問わず(もしかしたら国も問わず)あるのでしょうか。今回の話では、世代の相違が感覚の相違になっているのでしょうか。お母さん(お姑さん)世代なら盛り合わせにも普通に入れていた食べ物が、子ども(お嫁さん)世代には普通入れないよねという感覚に変わっているのでしょうか。そしてあこきはそのことを夫の仕業だろうと(本気で)思っているようではないでしょうか。夫婦の仲とか関係が普段からそういうものだったのでしょうか(つまり、帯刀があこきをからかったり、いたずらを日頃から普通にしていたのでしょうか)。それにしてもこのお姑さん、とっても人柄が良さそうではないでしょうか。若い世代にはうざいとかいらないとかなってしまうのかもしれませんが、子を思う親心にも近いものではないでしょうか。そして夫の帯刀の立場も、時代や社会のあり方を問わず、似たもの、共通したものを感じないでしょうか。現代の旦那さんたちも、奥さんと実母の間で板ばさみになったりしながら、お母さんに歩み寄ったり譲ったりという姿勢を見せない奥さんに困ったなと、うまくやってくれればありがたいんだけどな、と思っていたりとか、しないでしょうか。親世代のお姑さん(帯刀のお母さん)の方が、はるかに器が大きい印象でしょうか。子世代の方はそれだけ未熟ということでしょうか。結婚のあり方はずいぶん違うようなのに、嫁姑問題は同じらしい、ただ平安時代の場合は(すべてのケースでそうなのかはわかりませんが)どうもお姑さんの方がお嫁さんに気を使っていたり譲っていたりするんじゃないか、そうした様子がうかがえるでしょうか。そういえば親世代が娘とその婿の面倒を見るのが普通のあり方で当然のようだったでしょうか。もしかしたら平安時代というのは、年を重ねた人たちの方が、若い世代に譲り、そちらを立てるのが当たり前の社会だったのでしょうか。帯刀のお母さん、素敵ですね。

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。

 

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Posted by preciousgraceful-hm