Ochikubo-26
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
牛車の用意ができましたと知らせが来ても、「雨がやむまで待とう」と右近の少将は横になったまま起きようとしません。こうなると姫様づきの女房を自負するあこきとしては、このまま順調に行けば正式に姫様の夫となるはずの右近の少将に朝の身支度を整え朝食を召し上がっていただく準備をしたいとまた思案をめぐらし、台所の知った者にきいてみようか、でも誰もいないわよね、おかゆをお出ししたいけど、無理だろうなあ、と思いましたが、それでも試しにと台所へ向かいました。「昨夜、夫の帯刀を訪ねてきたのがいてね、雨がふってるじゃない、それでまだいるのよ。おかゆぐらいはと思ってね、困ってるの。もしお酒もいただけたらありがたいんだけど。あとおつまみも、海藻の干したのとかもしあったらなあと…」とあこきが言ってみると、「それはお困りね。あなたも大変ね、女房の仕事に加えて夫のお客の世話までしなきゃいけないなんて。皆様が戻られたらと取ってあるのがあるわよ」と親切に申し出てくれたので、「ああ、そっか、お魚料理をいただくのね」と調子よく合わせ、これならもらっても大丈夫そうねと思ったあこきはお酒の入った瓶を手に取りなみなみとついでいくと、「えっ、そんなに?」と不安そうなのを横目に、「あら、入れすぎた?」と軽くかわして干した海藻も遠慮なく紙に包んで手近な器におさめ、着物に隠すようにして台所から戻り、まだ幼い侍女におかゆの盛り付けできるわね、頼むわよと言いつけて、上等で見栄えの良いお膳がないかと探しに行きました。それが済むと今度は手や顔を洗う水を出すのに使える容器はないかと考え、姫様のところには手ごろなものがなかったかしらねえ、仕方がない、三の君様のを使わせてもらうかしらね、と上等なお品を準備し、右近の少将のいる姫様のお部屋にうかがえるよう髪を整え直しました。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「「それはお困りね。あなたも大変ね、女房の仕事に加えて夫のお客の世話までしなきゃいけないなんて。皆様が戻られたらと取ってあるのがあるわよ」と親切に申し出てくれたので、「ああ、そっか、お魚料理をいただくのね」と調子よく合わせ、」という箇所の古語を取り上げます。
「「あないとほし。心いそぎを、かうしてしたまふがいとほしさ。帰らせたまはむ料に、今少しあらむ」と言へば、「帰りたまはむには、御としみをぞしたまはむ」とて」
いそぎ
①急ぐこと・急用・心がせくこと②準備・用意・したく
かう
①このように②相手の言動への同意を表す・そう・そのとおり③これこれ・しかじか
して
①○○で・○○とともに②○○を使って・○○に命じて・○○に③○○で・○○でもって④○○て・○○で・○○の状態で⑤○○で・○○ので・○○から⑥○○のに・○○けれども・○○ものの・○○にもかかわらず⑦上の語を強調する
帰る
①もとの位置や場所にもどる②来た方向へもどっていく・ひきかえす③もとの状態やようすにもどる・立ちかえる④季節や年があらたまる⑤ひっくりかえる⑥(染めた色が)あせる・変色する⑦すっかり○○する・ほとんど○○する
料
①ある目的のために用意したもの。また、その材料②必要な経費・代金③ため・ゆえ・目的・理由
今
①現在・この時②新しいもの・新しいこと③ただいま・今すぐに④まもなく・やがて・そのうちに⑤さらに・なお・もう⑥新たに・今度
としみ
ある期間精進した後で、肉食が許されること。賀の祝いの法要の後、饗宴を行うこと・精進落とし
あこきの話を聞いて答えた台所で働いている女性の言葉とそれに応じるあこきの言葉のようです。人が良さそうな印象を受けるでしょうか。そこをあこきは利用しているようにも思えます。この際姫様のためならかまわない、これも致し方ないと思っているのでしょうか。
平安文化のあれこれ
お寺にお参りに行くときには、どうやら肉や魚を食べない精進料理を取り、戻ってきたら肉や魚を食べる精進落としをいただいたようです。旅は楽しみなようでしたけれど、食事は質素だったのでしょうか。それに邸に残って迎える準備をする人もいたようではないでしょうか。わざわざ精進落としの料理を作って食べるのも大切な行事(儀式)の一つだったのでしょうか。
平安時代は井戸水だった(水道はない)のでしょうか。侍女や女房が汲んで器に入れて、それを主が使うために運んでいたのでしょうか。右近の少将が朝になっても居すわったままなので、あこきのやる仕事が増えているという感じでしょうか。ただ、右近の少将はおちくぼ姫と一緒にいたい(帰りがたい)からこそとどまっているわけで、そこはあこきとしてもプラスの要素でしょうか。だからきちんとおもてなしして、正式に夫として処遇するといった感じでしょうか。あこきとしては姫の家具などと同様に、姫様に恥をかかせてはならないという使命感の下、立派な品を集めて使おうと頑張っているようではないでしょうか。それが右近の少将にも良い印象を持たせられるだろうし、何よりおちくぼ姫が安心する(もしかしたら喜ぶ)のではないでしょうか。あこきが一生懸命心をくだいているのが伝わってくるでしょうか。右近の少将はそうした苦心に気づくでしょうか。(手段を選ばずという問題はあるかもしれませんが)あこきはやっぱり立派じゃあないでしょうか。ひたすらおちくぼ姫の幸せのために一心に尽くしているように思われます。
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