Ochikubo-23

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

その日また右近の少将はおちくぼ姫に宛てて文をおくりました。「どういうわけか、やっぱり袖にされているというのに、それでも貴女のことが前にもまして愛おしく思われるのです。うちとけず、一人つらさを抱えてたえしのぶ、そんな姿を見るにつけ、ますますぜがひでも力になりたい、お幸せにしてさしあげたい、との思いがわいてくるのです。自分でも不思議に思います。」この文に帯刀はあこきに宛てた文を添えました。「今度こそお返事をいただいてくれ。殿にもメンツがある。頼むから力を貸してほしい。少将様の姫を想うお気持ちは一時の気まぐれではないと拝察する。現に殿も本気だと仰っている。」夫の意に添い、あこきは姫に「どうかお返事を」とうながしましたが、姫はやっぱり右近の少将にあんな姿の自分がどう思われているだろうかということばかりが気になって、恥ずかしさとやるせなさで気持ちがうちしずみ、わたくしのようなものがお返事を差し上げることなどできましょうや、と横になられたまま顔まですっぽりおおい隠していらっしゃいます。そんなご様子にあこきもあきらめ、帯刀に返事を書きました。「見るだけは見ていただけました。でもね、どんなにおつらいか、あんたに見せてあげたいくらいよ。返事なんか書けるわけないでしょ。それよりさあ、一時の気まぐれではないなんて、どうしてわかるのよ。それならもう飽きたって心変わりする日も拝察されたりするんじゃないの。本気だってのも、あてになるのかしら。調子ばっかりよくてもねえ。」このあこきの文を帯刀は右近の少将に見せました。「口が立つな。かなわないだろ。姫は俺に恥をさらしたと思い詰めるあまり気が高ぶっているのではないか」と動じる様子もありません。
あこきは姫様の力になれるのは私しかいないと、一人必死で知恵を絞り忙しくあれこれと奮闘しました。右近の少将が本気で姫を妻にする気があるならば、当然今夜も姫のところに訪れるはずです。それに備えて姫様の部屋をきれいに整え、姫様に恥をかかせないようにと万事に心を配りましたが、普通なら当然あるべきびょうぶもきちょうも北の方が取り上げてしまっていたので、夫となる少将を迎えるにふさわしいしつらえにはなりません。どうしたものかと途方に暮れる中、それでもまずは掃除だけでもと顔をふせただ泣いてばかりいる横になったままの姫様に起きていただくと、頬も目も真っ赤に泣きはらして痛々しい姿です。あこきはとても見ていられず、たまらない思いで「おぐしを整えましょう」と姫の美しい髪にくしをあてますが、「起きたくないの」と動こうとはされません。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「あこきは姫様の力になれるのは私しかいないと、一人必死で知恵を絞り忙しくあれこれと奮闘しました。右近の少将が本気で姫を妻にする気があるならば、当然今夜も姫のところに訪れるはずです。それに備えて姫様の部屋をきれいに整え、姫様に恥をかかせないようにと万事に心を配りましたが、普通なら当然あるべきびょうぶもきちょうも北の方が取り上げてしまっていたので、夫となる少将を迎えるにふさわしいしつらえにはなりません。」という箇所の古語を取り上げます。

「さて、あこき、ただひとりして、言ひ合はすべき人もなければ、心一つを千々になして、立ち居つる。おまし所の塵払ひ、そそくりて、屏風、几帳なければ、しつらひなさむ方もなし。」

ひとり
①単独・単身②結婚していないこと・独身

言ひ合はす
①おたがいに話し合う②相談する③申し合わせる・口約束をする

べし(←べき)
経験や道理、証拠に照らして当然だと確信をもって推量する⇒①○○にちがいない・○○はずだ・きっと○○だろう・○○そうだ②○○つもりだ・きっと○○う(よう)③当然だ・○○べきだ・○○なければならない④○○のがよい・○○のが適当だ⑤○○べきだ・○○なければならない⑥○○できる⑦○○ことになっている

一つ
①数の一・一個・一歳②どれか一つ・どちらか一つ・一方・一面③(異なる二つ以上のものが)同一になること・同じ時、同じ場所など・いっしょ④第一・一番目⑤それだけであること・単独・唯一⑥時刻の名・一刻を四等分したときの最初の一区分⑦少しも(ない)⑧わずかに・ちょっと・試みに⑨十分に・かなり

千々
①数が多いこと・たくさん②いろいろであるさま・さまざま

なす(←なし)
①行う・する・果たす②作る・形作る③(他のものに)する・変える④(あるものの代わりに)用いる⑤任命する・位などに就かせる⑥そのように○○する⑦わざと○○する・ことさら○○する

立ち居る
①立ったり座ったりする・起居する②(雲などが)空に浮かんでいる

おまし所
①天皇や貴人のいる所の敬称。御座所

そそくる
指先などでもてあそぶ・忙しく手先を動かす

屏風
家具の一つ。室内に立てて、風をさえぎったり、部屋を仕切ったり、装飾に用いたりする。二枚、四枚、六枚と連ねて作り、折り畳める

几帳
寝殿造りで室内の仕切りや、座のわきに置いてへだてとした家具。土居(台)に足(二本の柱)を立て、手(横木)を渡し、帷(かたびら)という布を垂らし、野筋というひもをつける。柱の高さにより、三尺(約九一センチメートル)と四尺(約一二一センチメートル)がある。帷には夏は生絹(すずし)、冬は練絹(ねりぎぬ)を用いる。

しつらひ
調度品をととのえ飾りつけること・設備・装飾

方
①方向・方角・方位・向き・ほう②場所・ところ・部屋③方面・点・それに関する事柄④その方面の人・また、(高貴な人を間接的に表すときの)お方⑤時節・ころ・時刻⑥方法・手段・すべ⑦(対になるものの)一方・側・組

 

平安文化のあれこれ

平安時代の結婚は、男性が女性のところに三晩連続して通うことで成立する(夫婦となる)ようでした。ということは、右近の少将が誠意を示すなら、当然二日目の晩もおちくぼ姫のところに来るはずで、そうすると今度は右近の少将がおちくぼ姫と結婚前提で来るということがわかっている(ようなものな)ので、その準備が必要で、そこにあこきは意識を向けているのではないでしょうか。晩が来るまでに準備万端整えておかなければならない、それには時間がない、家具もない、どうすればいいの、といった感じでしょうか。普通は女房や侍女が何人もいて、みんなで分担して夫となる人を迎えるのでしょうか。ところがおちくぼ姫の場合は、あこきしかいないのではないでしょうか。だから普通は何人もで手分けして行うことをあこきはおちくぼ姫のために全部一人でやらなければならないのではないでしょうか。しかも、北の方の意地悪のせいでどうやら姫はまともな家具も持たせてもらえていないのではないでしょうか。つまり姫は自分の身なりのことばかり気にしていたようでしたけど、実は身なりだけじゃなくて、姫の部屋自体も普通ではない、欠けたところだらけで問題があったのではないでしょうか。そこにあこきは気がついていて、右近の少将が来たときに姫がさらに重ねてみじめで恥ずかしい、情けないという思いを味わわないですむようにどうにかしなくてはいけないと焦っているのではないでしょうか(それも晩までで時間がない)。身なりのことを右近の少将がわかってくれるというのなら、部屋のこともわかってくれそうなものですが、それでもプライドというか、せめてもの、せいいっぱいのことをしたい、というあこきの姫を思う真心でしょうか。もしかしたら馬鹿にされたくない、ナメられたくないとか、そうした思いもあったのでしょうか。あこきはステキです。

 

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Ochikubo-Hime (Princess Ochikubo)

Afterward again Ukon’no Shoushou presented a letter for Princess Ochikubo: “Strangely, despite your unchanged cold treatment, my love for you has become stronger. Your seclusive solitude bearing pains and sorrows made me determine the will to become your Prince saving you from the adversity and bringing happiness to you." This letter was accompanied by the letter from Tachiwaki to Akoki, which asks a reply from the Princess; I cannot let my master lose face, so please share my wish for happiness of your Princess and my Prince. In addition, Tachiwaki expressed his impression that Ukon’no Shoushou has not approached the Princess out of a momentary caprice. According to the servant considerate of his master, actually his master openly states his serious commitment. Respecting his wish, Akoki asks her Princess for a reply, but the Princess is only worried about how Ukon’no Shoushou has thought of her appearance; shame and misery has engulfed her, which makes her hide completely under the cover, still lying. How could I give a reply? Is a woman in such a shameful clothes entitled to such a relation? Only giving that answer, the Princess would not even move, much less get up. Quite helpless, Akoki cannot do or say any more; she reports to Tachiwaki that the Princess saw the letter from Ukon’no Shoushou but that her aches are so acute as in a panic and freezed. She tells him that he should see her suffering with his eyes. And her doubt is expressed about the seriousness of Ukon’no Shoushou; How could you know it? If you see it, you’ll also see his change of mind that he’ll no longer want her. Akoki declares that she, on behalf of her Princess, demands that his love for the Princess must be absolutely reliable and forever. They cannot rely on his glib talk. Ukon’no Shoushou read the letter to Tachiwaki from Akoki. “She never loses, doesn’t she? You never win, don’t you? Princess Ochikubo will be stirred too much as she has been brooding over her appearance before me," says Ukon’no Shoushou, not upset nor perturbed.
Akoki struggles for preparation for the night alone; she is the only guardian that her Princess can rely on. She racks her brains hard for this and that, anticipating true love of Ukon’no Shoushou for Princess Ochikubo, and works very hard to welcome the Prince as husband of the Princess, cleaning the place and organizing things neat and tidy. However, the Princess’ place lacks the furniture and other fittings such as “byobu" (portable folding screens) and “kichou"(portable curtains) which are usually available in every single room as Kitanokata deprives her stepdaughter of them. What will he think of such state of the room? And how will the Princess feel? Akoki is at a loss; she would have wanted to make sure everything is right and proper. For the time being, she can only do the cleaning and she asks the lying and weeping Princess with her face down to get up and finds a red face and red eyes and painful, pitiful figure. Akoki cannot stand seeing her precious treasure; she proposes that she will comb the beautiful hair of the Princess, but her mistress still would not move, saying that she does not feel like doing anything.


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Posted by preciousgraceful-hm