Ochikubo-19
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
「いくらなんでもこれほどまでもお嘆きになるとはどういうことかと私も戸惑っております。手放しで喜ばれるにはほど遠いにしても、ここまで泣いて嫌がられるほどひどくはないと思うのですが。なんど文を差し上げてもなしのつぶてで一言すらいただけず、では控えたほうがよいのかとも思い、ならばそのようにとも思いましたが、初めて気持ちをお伝えしたときからずっといとしさが募るばかりで、つい抑えがたい心のままにここまで参りました。きっと姫に嫌がられても仕方のない宿命でもあるのでしょうが、私には貴女を思い切るなどとてもできません」と右近の少将は思いの丈を切々と訴え、姫を強く抱いて横にならせると、姫は生きた心地もしませんでした。着崩れてはだけてしまったところもあるのではないかと思うと、大変どころの話ではない、今は汗が止まらずこわばるばかりです。そうした姫が少将にはますますいとおしく思われ、なんとか心を開いてもらおうと声をかけるのですが、姫にはそれどころではなく、ただただたえがたく、これはあこきのはからいかとうらみにすら思われてくるのでした。
ようやく夜が明け、鳥が鳴きだすと、右近の少将は、「あなたは一晩中泣くばかりで、私も残念です。とうとう朝が来て、別れの時を告げる鳥の声がなんともつらい。どうかたまにでもかまわないので、一言だけでもお聞かせください。でなければ情にうといお方かと思ってしまいますから」と姫に訴えると、今にも気を失わんばかりでかぼそい声でしたが、「こんな目にあわされた上に、なおお求めになるとは。鳥の声ならお返しいたしますけれど」とやっとのことで応じられたのがこの上なく愛おしく思われて、かりそめに楽しめればそれでよいとのお気持ちがにわかに本気で姫を望まれるようになられるのでした。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「今にも気を失わんばかりでかぼそい声でしたが、「こんな目にあわされた上に、なおお求めになるとは。鳥の声ならお返しいたしますけれど」」という箇所の古語を取り上げます。
「からうじて、あるにもあらずいらふ。人ごころ憂きには鶏にたぐへつつ なくよりほかの声は聞かせじ」
からうじて
やっとのことで・ようやく
あるにもあらず
生きているともいえないような状態、やっと生きているような状態である
いらふ
(相手を適当にあしらう返答)答える・返事をする・返答する
人ごころ
①人の心・人の情愛・情け②正気
たぐふ(←たぐへ)
(人・ものが)①寄り添う・一緒にいる②一緒に行く・伴う・連れ立つ③似合う・適合する
(人・ものを)④寄り添わせる・一緒にいさせる⑤一緒に行かせる・伴わせる⑥似せる・なぞらえる・比較する
じ
①○○ないだろう②○○ないつもりだ・○○まい
人ごころ憂きには鶏にたぐへつつ
=右近の少将の心がいやで憎くて気にくわないので鳥になぞらえて(おちくぼ姫が鳥になって)
なくよりほかの声は聞かせじ
=(鳥になったおちくぼ姫の)鳥の鳴く声以外の(おちくぼ姫自身の)声は聞かせないつもりだ
右近の少将が突然おちくぼ姫の寝所におしかけてきて無理矢理力づくで姫を思い通りにしようとしたことに、姫が右近の少将に直接恨みの思いをぶつけて伝えているのではないでしょうか。右近の少将は夜明けを告げる鳥の声が「うらめしき」と言っているけれど、姫は右近の少将のやり方に(当然)反発しか感じていないし、そんな少将の想い(気持ち)に応えるつもりはないという意志を、少将が「うらめし」という鳥に姫自らがなって、少将に夜明けの時を告げる、つまり姫との別れの時を告げる、ひいては姫が自ら右近の少将に別れを告げているのではないでしょうか。もっと言えば、姫はこの歌を通して、もう二度とあなたに会うつもりはありません、二度と来ないでください、あなたの気持ちに応えるつもりはありません、と言っているのではないでしょうか。
平安文化のあれこれ
おちくぼ姫のプライドを感じませんか。たしかに継母の北の方にいじめられ続けるというみじめな境遇に落ちぶれているかもしれないけれど、それでも高貴な由緒ある血筋を引く母上様の娘だという意識のようなものがうかがわれないでしょうか。安易に妥協しないというか譲らないというか、自分をしっかり持っているとも言えるでしょうか。芯がある、芯が強いという感じでしょうか。落ちぶれているからといってバカにするな、ナメるなと言っているようにも聞こえないでしょうか。そういうおちくぼ姫を右近の少将は気に入っている、というより見直しているのではないでしょうか。もしかしたら敬意すら感じていたりしないでしょうか。だからこそちょっと遊んで楽しんでおしまい程度だったものが、こういう女性にそういう扱いはないな、そういう軽い扱いはふさわしくないな、失礼だな、とでも思わせたのでしょうか(おちくぼ姫の毅然とした対応が)。ただおとなしいだけではない、言うべきときには言うべきことを言う、そういうしっかりとした一面もおちくぼ姫にはあるようではないでしょうか。やっぱり北の方に無駄に逆らわないところがおちくぼ姫の賢明なところじゃあないでしょうか。本当は言えるし(やれることがあれば)やれるんだけど、でもそこをあえて言わない、やらないというスタンスで通している、それは自分の置かれた立場とか力の限界をよくわかっている、自覚しているからなんでしょうか。おちくぼ姫というのは、感情に流されず、自分のことも周りのことも冷静に見て考えて動ける(動かない)、そういう賢い女性のようではないでしょうか。ただ何もできず泣き寝入りしているのではなく、あえて何もせず泣き寝入りという選択肢を取っているようにも思われないでしょうか。ということは、状況次第では、状況が変われば、おちくぼ姫の対応も変わるのでしょうか。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。
このコンテンツはこのサイトでのみ公開いたします。
このコンテンツの著作権はすべて著作者が保有いたします。
このコンテンツは閲覧以外の利用をすべて禁止いたします。
【お願い】
このコンテンツは無料で閲覧いただけますが、このページ末尾にある “お心付け" ボタンから、ぜひお心付けをいただけませんでしょうか。100円からお願いしております。ご検討いただけましたらありがたく存じます。
また、最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか([注意!] 「おちくぼ物語(英語サイト)」(https://jacl-en.it-is-the-tale.com) の English version と同じものです)。(なお、毎回英語版をご購読いただいた場合には高額となるおそれがあります。またいかなる場合も返金には応じられません。またご購読いただいた英語版にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきいただけますようお願い申し上げます。)
“I’m puzzled why you’re crying so hard… I think you’re overreacting too much… It is certainly far away from overjoyed welcome considering the situation, but I believe that I’m not so bad or terrible as being refused or denied… You totally disregarded my frequent calls without a slight response and I thought that maybe I had better refrain from asking your acceptance and actually I tried to do so… but still my love for you has been just growing more intense since I confessed my affection to you in the first letter and finally my uncontrollable impulse got me here. Probably my fate is to be rejected by you no matter how hard I try, but still I cannot give you up," said Ukon’no Shoushou, ardently appealing to Princess Ochikubo, and firmly held and laid her with him. The Princess is frightened to death. She is concerned about her clothes coming loose and her arms or legs partly bared; it’s not just a blunder but it’s the crisis in her life. Now she has stiffened with a gush of sweat. That Princess captivated and mesmerized the would-be Prince, who made more efforts to open up her closed mind, devoting sweet and loving words to her with his sincere heart. However she cannot afford to hear them; the humiliation she’s just facing is utterly intolerable. Is this arranged, she wondered with an ill feeing against, by Akoki?
Then at dawn birds began to cry. “I’m so sorry that you’ve been weeping all night. The unwanted daybreak has brought the birds’ declaration of the time for good-bye to you. How so cruel it is! Please let me hear you, even just only one word, even just from time to time. Otherwise you would be a heartless, merciless Venus to me," said Ukon’no Shoushou forcefully to the Princess. In a feeble voice, about to faint, the tragic Princess barely said, “How could I give anything but the birds’ cry as it is you that are so horribly agonizing me." Upon hearing, the future Prince has attachment to her that has never felt; his seek for transient joy with her has instantly turned to earnest and honest love for the Princess.
ご購読いただきまして、ありがとうございます。
❗️この英語版は、「おはなしを読む」(おちくぼ物語―日本語サイトhttps://jacl.it-is-the-tale.com / 英語サイトhttps://jacl-en.it-is-the-tale.com)でのみ公開いたします。
❗️この英語版の著作権はすべて著作者が保有いたします。
❗️この英語版は購読以外の利用をすべて禁止いたします。
Copyright (c) since 2026 preciousgraceful-hm All Rights Reserved.