Ochikubo-18

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

あこきは姫様のすぐそばの部屋に帯刀と寝ていたので、もれ聞こえる声の様子から涙が止まらずおつらそうなのがたまらず、だからすぐさまおそばに参らねばと急いで動こうとするも、またもや帯刀が押しとどめるので、「大切な姫様をどうしようっていう魂胆なの、あんたは。よくもこんなことを。なんか変だったものね。まったくこれが愛する妻にすること? あんたそれでも夫なの?」と怒り心頭で、帯刀を突き飛ばして立ち上がると、妻の怒りなどどこ吹く風でヘラヘラと笑いながら、「お前はなんでも俺のせいにするんだな。姫様のご寝所に出入りがあるとすれば、そりゃあれだろ。なっ、だろ。だったらお前が行ってもな。だろ、なっ。あきらめろ」と無責任な帯刀の言い草に、「なんとまあ、よくもまあ。しらばっくれようたってそうはいかないわよ。知ってんでしょ、あんた。とんでもないことしてくれたわね。ああ、大丈夫かしら、姫様は。ああ、どうしよう、どうしたらいいの」と姫様の胸中を思い泣き出したあこきに、さらに追いうちをかけるように「もう子どもじゃないだろ」とやっぱりヘラヘラと帯刀が軽くあしらって真面目に応じようとしないので、ますますあこきは腹が立つやら悔しいやらで、「妻を思いやれない男なんかとなんで結婚したのかしら」と恨み言まで口にして、帯刀は本当に冷たいクズのレッテルを貼られて、さすがにそれはたまらず、「わかった。話すよ。あのな、少将様なんだよ。姫様にな、一言でもと、来られたんだ。だけど、どうなっているんだろうな。まあ、泣くなよ。頼む、聞いてくれ。どのみち、こうなる運命だったんだ、姫様は」と勝手なことを言うので、「意味わかんない。あんた、あたしをだましたのよ。それなのに、あんたなんかと一緒になって姫様をあんな目にあわせたと思われるに決まってるじゃない。どうしてくれんのよ。ああ、もう、なんであんたなんかと一緒に。ああ、もう、なんでよ」と愚痴がとまらないあこきに、「お前は関係ないってことぐらい、姫様だってわかるだろ。そんなに怒るなよ。なあ、勘弁してくれよ、頼む」と帯刀は謝り、なんとか怒りを解いてその場を取りつくろってやりすごそうとしました。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「あこきは姫様のすぐそばの部屋に帯刀と寝ていたので、もれ聞こえる声の様子から涙が止まらずおつらそうなのがたまらず、だからすぐさまおそばに参らねばと急いで動こうとするも、またもや帯刀が押しとどめるので、「大切な姫様をどうしようっていう魂胆なの、あんたは。よくもこんなことを。なんか変だったものね。まったくこれが愛する妻にすること? あんたそれでも夫なの?」と怒り心頭で、帯刀を突き飛ばして立ち上がると、妻の怒りなどどこ吹く風とヘラヘラと笑いながら、」という箇所の古語を取り上げます。

「あこきが臥したる所も近ければ、泣いたまふ声もほのかに聞こゆれば、さればよと思ひて、まどひ起くるも、さらに起きさせねば、「わが君をいかにしなしたてまつりて、かくはするぞや。あやしとは思ひつ。いとあいぎやうなかりける心持たりけるものかな」とて、腹立ち、かなぐりて起くれば、帯刀笑ふ。」


①場所・地点②その土地・その場所・居場所・住居③部分・箇所④地位・官位⑤役所名・特に蔵人所・武者所⑥こと・点・とき・場合

聞こゆ
音や声が自然に耳に入る⇒①聞こえる・耳に入る②申し上げる
①→③うわさされる・世間に知られる→④理解される・わけがわかる
②→⑤手紙を差し上げる・伝言で申し上げる→⑥お願い申し上げる→⑦(人名や官位など)○○と申し上げる・○○とお呼びする
②→⑧お○○申し上げる・お○○する

さればよ(=さればこそ)
①(予想などが的中して)だから言ったではないか・思ったとおりだ・案の定②(相手の言動に不満で、それを制しとどめ、自分の思いを述べて)いや、それなのです・いや、そうだからこそ

まどふ(←まどひ)
思い悩む・どうしたらよいかわからない⇒①(心が)乱れる・迷う・思い悩む②(進路や判断などに)迷う・途方にくれる③あわてる・うろたえる④ひどく○○する

起く
①起き上がる②目ざめる・起きる・寝床を離れる③寝ないでいる

さらに
①新たに・改めて②重ねて・そのうえ・いっそう・ますます③全然・決して・まったく(○○ない)

さす(←させ)
①○○させる②お○○あそばす③お○○申し上げる④○○させる・○○される

ず(←ね)
○○ない

しなす(←しなし)
その状態にする・こしらえる・作り上げる・わざとする

あいぎやう
①(顔・かたち・表情・ものの言いかた・しぐさなどに)やさしい・思いやりの気持ちが自然に感じられて心が引き付けられること・愛らしさ・かわいらしさ・魅力②深い愛情の心をもって、いつくしむこと・愛され好まれること③男女が互いに愛情と尊敬の心をもって思いやり、結ばれること・結婚

なし(←なかり)
①存在しない・ない②生存していない・死んでいる③不在である・留守だ④ないと同じような状態である・世にいれられない⑤たぐいない・またとない・少ない⑥○○でない

ものかな
○○ものだなあ

かなぐる(←かなぐり)
髪や着物などを強くつかんで引っ張る・乱暴に払いのける

 

平安文化のあれこれ

あこきが本気で怒っているのに、帯刀は笑っていますね。この(男女の)あり方が、もしかしたら平安時代の男性と女性の関係をよく表しているのでしょうか。本気でやめてほしいと思っている女性の気持ちを、男性はことごとく無視する、まともに受けとめない、軽い冗談で片付けようとする、そういう感じでしょうか。女子はたまったもんじゃありませんねえ。男子はいい気なもんじゃあないでしょうか。結局、女子は泣き寝入り、男子は思うがまま、だったのではないでしょうか(この帯刀とあこきのように)。単に社会を動かしていたのが男性だったという意味だけではなくて、男性の思いは通るもの、女性の思いはないがしろ、という意味でも男性社会、男性優位、男性中心の世の中だったのではないでしょうか。そりゃあ、女子が泣いて愚痴ってばっかりの和歌がたくさん残っていても不思議はないでしょうか。なんとなくお気楽な印象を受ける右近の少将が人生を思う存分楽しんでいるように思われて、それとは真逆の対照的におちくぼ姫は何も望まないところまで徹底的に心がつぶされているようで、そこに平安時代の男性の立場(特権)と女性の不遇の有り様がよく反映されていないでしょうか。男は笑って、女は泣く――これが平安時代でしょうか。道長が笑い、定子は泣く、そして実の娘の彰子も泣かす……。でも、そういう中にあって、清少納言は泣かない……。気骨というか、気丈でしょうか。反骨心なんでしょうか。なんにしても、頼もしい。

 

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Ochikubo-Hime (Princess Ochikubo)

Akoki sleeping with her husband in the room next to the place of Princess Ochikubo heard the faint sound of the Princess’ weeping, which naturally got her stand up instantly as she could not help overlooking her Princess’ crisis, but again Tachiwaki stopped her. “What? You’ve come here with an ill intent, haven’t you? What are you going to do with my precious Princess? How dare you see me? I felt something strange with your behavior. Are you really my husband? How could you betray me like this?" said Akoki, flying into a fury, and thrust him away. Tachiwaki, laughing her rage away, “You always lay the blame on me for anything. At this hour anyone in and out of the Princess’ bedroom would be … you know, you see…. Well, then, even if you go, it’ll be … you know…. So leave it," said Tachiwaki, indifferent to her indignation. Akoki could not stand his irresponsible attitude without any concern for the Princess, firing criticism; “Oh no! Oh God! How so blatant! You cannot escape. You shall tell the truth. You’ve done such an inexcusable blunder. Ah! My dear Princess… If she’s… Oh my… Oh God! What shall I do? What should I…?" Then Akoki began to cry, sharing the devastating shock that her Princess should be feeling. Nevertheless, Tachiwaki still sniffed at her, saying “So childish" in a light, frivolous tone, which further infuriated Akoki. “Oh, well, I’ve made a mistake of marrying to an inconsiderate, cold-blooded beast," said the raging wife, expressing a grudge against her husband and labeling him a dirty scum in a serious tone without fooling. This treatment Tachiwaki could not take; “All right. The truth is, Ukon’no Shoushou is coming to see Princess Ochikubo. My master wants to talk with your mistress. But what’s going on? Ah, don’t cry, please, listen to me. Anyway this is the destiny for your Princess." On hearing his unfair remark, Akoki cannot stop complaining; “I don’t understand. You’ve deceived me. And I will be an accomplice in cheating the Princess as I’ve been with you. How could you resolve her mistunderstanding for me? Ah! Damned! What a fool I was that I’ve been with you. Ah! Damn you! Damn Me!" " Your Princess will see that you have nothing to do with it. Don’t get so mad! Please forgive me. For God’s sake, please." Tachiwaki apologized to ease her anger at all and quiet her down under his control.


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