Ochikubo-16

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

帯刀は結局おちくぼ姫の部屋に右近の少将を連れて行き、中の姫君にはわからないように外からそっと格子を開けて、人一人ようやく入れるすき間に少将をはいらせて、その間、宿直の警備にあたる者に気づかれないよう辺りを警戒しました。まず右近の少将の目に入ったのは、かすかなろうそくの灯りでした。まともな家具も与えられていない姫君の部屋はさえぎるものがないので中の様子はよくわかりました。少将のいるところから顔の見えるのは、帯刀の妻であるあこきのようでした。美人できれいな髪をしており、普段着とはいえ上等なもののようでした。そしてもう一人、何か物に寄りかかっているらしい人がいました。おお、これがおちくぼ姫だな。ぼんやりとした明かりでも相当いたんだ着物なのがわかります。残念なことに背を向けており、美しくなびいている髪に目をこらしていたら、ろうそくの灯りが消えたようでした。ああ、せっかく姫をやっと見られたのに、いや、でも、姫は俺の妻になるのだから急がずともよい、と思いなおされるのでした。そこへ、「まあ、これでは。そういえば、あなたに会いに来ているのでしょう。もう、よくてよ、わたくしのことは」とあこきに話しかける姫様のご様子もたおやかで優雅に聞こえます。「いいんですよ。どうせ他に呼び出されて私を置いていったんですから。それよりいつもはにぎやかなお屋敷がこんなに静まりかえっていては姫様もお一人では怖くありませんか」とあこきが言うと、「いいのよ、大丈夫だから。一人で怖い思いをしているのはいつものことだわ」と姫様はこたえられました。ここまで聞いたところで、右近の少将は格子の外に出ていきました。「どうでしたか。お帰りになられますか。笠はどうされますか」と帯刀が軽口で問いかけると、「なんだよ、あこきと過ごしたいのに、おれが邪魔か」と少将は冗談で返されました。
暗い中にも目についた着物のことを思うとこのまま会えば姫に気まずい思いをさせるだろうなとは思われましたが、それでも少将は帯刀に「さっさとあこきと消えろ」と指図したので、さっそく姫様のところからあこきを連れ出す任務に動くも、「あたし、朝まで姫様に付き添うわ。あなたには警護の仕事があるでしょ」と応じようとしないので、「さっき呼ばれただろ、お前に聞いてほしいことなんだよ。手間は取らせないからさ、頼む」と食い下がると、「しつこいわね。そんなに急ぐわけ」と言いつつもあこきを部屋の外に出てこさせたところをすかさず抱きすくめて、「しとしと降る夜に一人で寝るなよと言われたのさ。そばにいてくれよ」と小声で誘うのに、あこきは鼻で笑って「やっぱり。用なんてないんじゃない」と言いながらも、帯刀に逆らわずついて行き一緒に寝ました。あこきを姫君の部屋から連れ出しておければ任務達成ということで、あとは無駄口をきかず寝たふりをしてやりすごしました。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「暗い中にも目についた着物のことを思うとこのまま会えば姫に気まずい思いをさせるだろうなとは思われましたが」という箇所の古語を取り上げます。

「心のうちには、衣どもぞ萎えためる、恥づかしと思はむものぞと思ほしけれど、」


①心・意識・精神②気持ち・感情・思いやり③意志・意向④思慮・分別・道理⑤情趣・情趣を解する気持ち⑥心構え・用意⑦本質・真相・意味・趣旨⑧中心・最も深いところ


①(その前の語句を強調する)○○こそ②(強い断定を表す)○○だ・である・よ③(疑問を強調する)○○か・のか

萎ゆ
①手足の力が抜けてぐったりする②(何度も着るうちに)衣服の糊が落ちて、柔らかくなる

萎えためる=萎え+ためる=何度も着るうちに衣服の糊が落ちて柔らかくなる+○○たようだ・ているようだ・ているように見える

恥づかし
自分にひけめを感じる気持ち⇒①きまりが悪い・気がひける・気詰まりである・遠慮される②立派だ・すぐれている


①○○けれども・のに・が②(たとえ)○○ても・でも、必ず

心のうちには、〜思ほしけれど=右近の少将は、心の中でお思いになられたけれども

衣どもぞ萎えためる=おちくぼ姫の着物は衣服の糊が落ちて柔らかくなっているようで

恥づかしと思はむものぞ=おちくぼ姫が、気がひける・気詰まりであると思い悩むであろうことをこそ

 

平安文化のあれこれ

現代人の感覚で言えば問題のある行動が少なくとも二つはないでしょうか。まず、右近の少将がおちくぼ姫の部屋を無断で(といっても許可が出るとは思えませんが)勝手に一方的に、現代風に言えば、"のぞき見" しているようではないでしょうか。これ、現代なら、捕まりませんかね。でも、平安時代には、驚いたことに、こうやって男性が一方的に興味のある女性の部屋をのぞき見することが普通に許されて一般的だったようです。女性の人権とか人格とかまるで無視でしょうか。そうした社会背景もあっての、藤原道長のような常軌を逸した極悪非道な独裁者の登場だったのでしょうか。プライバシーの侵害になりませんかね。もう一つは、右近の少将がおちくぼ姫と二人だけで会えるようにあこきを連れ出している、というより、おちくぼ姫を一人きりにさせようというのは、いったい何を企んでいるのか、となりませんかね。一人でいるおちくぼ姫の部屋に右近の少将は上がり込む、というより侵入する、無断ではいりこむ、つまり泥棒と変わらないことをしようとしているのでしょうか。これに、腹心といってもいい乳兄弟でもある帯刀が積極的に協力しているようではないでしょうか。これ、現代なら、大問題というより警察沙汰じゃありませんかね。平安時代というのは、こうした男女の力関係というかあり方だったようではないでしょうか。男性の優位性とかがはるかに高いでしょうか。逆に言えば、女性の無力さが際立ちますかね。帯刀はこんなことして、後で妻のあこきは大丈夫なんでしょうか(でも、妻より主君が優先するのでしょうけれど)。右近の少将も帯刀もこれで当然、ごく普通の当たり前のことをしているだけだ、という感覚というかスタンスでいるのが怖くないでしょうか。

 

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Ochikubo-Hime (Princess Ochikubo)

After all Tachiwaki took Ukon’no Shoushou to the place of Princess Ochikubo. He quietly opened the lattice from outside, so that the Princess was not aware of it. In the narrow space which can accommodate only one person, Ukon’no Shoushou was led. On the corridor Tachiwaki stood guard to escape from notice of the men of security service on night duty at the house of Chunagon. The first thing that Ukon’no Shoushou saw was a weak light of a candle. There was no proper furniture in the place of Ochikubo-Hime which should otherwise protect her from any eyes and thus he could discern the people there. The face he could see should be Akoki, wife of Tachiwaki. She is pretty and has beautiful hair in daily clothes of good quality. And the other one was leaning on some rest. Ah! This will be Princess Ochikubo. Even in the dim light, Ukon’no Shoushou found that her clothes was quite worn out. Regrettably only her back was could be seen. He looked hard at her hair making a beautiful line when the candle light went out. Oh! I have just only caught the sight of my Princess. But she will be my wife soon and so I don’t have to hurry. While he said to himself like that, the Princess talked to Akoki tenderly in an elegant voice; “Oh! it’s dark. I understand you have your man coming. I can take care of myself." “I greatly appreciate your consideration as always, but he has left me for someone who called him. Please do not mind. This silent house should frighten you as it is usually noisy with many people," said Akoki. “You don’t have to worry about me. I’m all right. It is a usual thing that I’m frightened," answered the Princess. Upon hearing these words, Ukon’no Shoushou left the narrow space and from the lattice went out to Tachiwaki waiting for him. “How is it? Will you go home? Do you take a hat for protection from rain?" To this joke, Ukon’no Shoushou also returned a joke; “What? You must want a night with your wife. Am I standing in your way?"
Taking into consideration the clothes whose damaged condition was visible in the dark, the Princess will be embarrassed if he sees her; however, Ukon’no Shoushou directed Tachiwaki to go with Akoki promptly. His loyal servant moved to carry out his mission to take the faithful maid out of the place of the Princess. However, she would not leave the Princess, saying “I will stay with my Princess till morning. You have work as guard." “I’ve just been called. That’s what I want to have you heard. No trouble. Please," said the servant, begging her to come and see him. “Don’t be pestering! Do I have to listen now?" Notwithstanding such response, the maid went out of the Princess’ place, just which moment he hugged her tightly and said in an enticing whisper, “I was told that I must not sleep alone at a rainy night. Please stay with me." She scoffed and said, “There! I guess you have no business with me," although she followed and went to bed together with her husband. His mission completed upon removing Akoki from the Princess’ place, the servant did not say anything more, feigning sleep.


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Posted by preciousgraceful-hm