Ochikubo-12
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
おちくぼ姫は本当に返事の仕方を知らないのだろうと右近の少将は残念がられたけれども、とても思いやりが深いお人柄だという話が強く心に刻まれていたので、そういうあり様こそ好ましく感じられ、「帯刀よ、まだ段取りはつかないのか」とせかされましたが、婿が三人もいる中納言邸では人の出はいりも多く、ひそかに姫に会うめどは立てられないまま手をこまねいて日がたっていきました。そこへ中納言家では神仏が願いをかなえてくださったお礼に石山寺におまいりに行くことになり、老いも若きもだれでもともに加わってもかまわぬとのはからいに、おちくぼ姫がぬけていることに気づかれた弁の御方という女房が、一人残られるとはお気の毒に、ご一緒に参っては、と北の方に頼まれましたが、「あれがそういう外出などしたことがありますか。道中ぬわせるものもありませんよ」とつっぱね、「遊び歩くなどもってのほか。部屋にこもらせて放っておけばよい」と冷たくあしらい、姫はとどまることになりました。
あこきは三の君のともに加えられ、華やかなお衣をあてがわれ同行することになっていましたが、大切な姫様をおいていくなどありえないこと、と月のものでまいれませぬと言い訳してとどまろうとしたら、「ウソをお言いでないよ。あれが行かないから、お前も残ると言っているのだろ」と北の方は怒りましたが、あこきは「どうせよとおっしゃるのですか。それでかまわないのでしょうか。ともにお加えになるのであれば従います。みながこぞって行きたがるお礼参りにございますよ。それをのがす人などおりましょうや。老いても一緒にという者すらいるのでございましょう」と言い返し、どうやら北の方もたしかにそうだと納得されたようで、下働きの年若い侍女にあこきのお衣を着させておたちになりました。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「どうせよとおっしゃるのですか。それでかまわないのでしょうか。ともにお加えになるのであれば従います。みながこぞって行きたがるお礼参りにございますよ。それをのがす人などおりましょうや。老いても一緒にという者すらいるのでございましょう」という箇所の古語を取り上げます。
「いとわりなきことも。よくはべなり。さぶらへとあらば参らむ。かくをかしきことを、見じと思ふ人はありなむや。おんなだに慕ひ参る道にこそあめれ」
わりなし(←わりなき)
理(ことわり)が無し⇒①道理に合わない・分別がない②どうしようもなくつらい・耐えがたい③(程度が)はなはなだしい・むやみなさま④無理にするさま・強いてするさま⑤ことのほかすぐれている・すばらしい
②⇒⑥やむを得ない・仕方がない・どうしようもない
こと
(言)①ことば・言語・また口に出していうこと②うわさ・評判③和歌
(事)④行為・動作⑤行事・儀式⑥できごと・世の中に起こる事がら・現象⑦特別なできごと・一大事・事件⑧事情・意味・わけ⑨仕事・用事・任務・政務⑩○○すること⑪○○ことよ・ことだなあ
いとわりなきことも=たいそう分別がないことだなあ
はべなり=はべ(る)+なり=○○でございます+○○のである
よくはべなり=さしつかえない・よろしいのでございますね
さぶらふ(←さぶらへ)
高貴な方のおそばで命令を待つ⇒①(高貴な方のおそばに)お仕えする・ひかえる②(高貴な方の所へ)参上する・伺う③ございます・おります④○○ます・(で)ございます
あり(←あら)
①存在する・(人が)いる・(物が)ある②この世に生きている・無事に暮らしている③その場にいあわせる④時間が経過する⑤すぐれている・栄える⑥○○なさる⑦○○状態である・いる・ある⑧○○である
さぶらへとあらば参らむ=おそばにお仕えしろという状態であるならば参るつもりだ
かくをかしきことを=このように興味深い・おもしろい行事・特別なできごとを
見る
①目にとめる・見る②眺める・見物する③見て判断する・思う④経験する・○○の目にあう⑤会う・対面する・顔を合わせる⑥世話をする・面倒を見る・お仕えする⑦夫婦となる・妻とする・異性と関係をもつ⑧ためしに○○する・試みる
人
①生物としてのヒト・人間②世間の人々・万人③自分以外の人・他人④おとな・成人・一人前の人⑤適当な人・すぐれた人・人材⑥人柄・人品⑦特定の人・あの方・あの人⑧身分・家柄⑨召し使われる者・従者⑩人け・人里⑪(親しい男女間で相手を呼ぶ語)あなた
なむや
①○○ないでしょうか・たらいかがでしょうか②○○だろうか、いや、○○はずがない
見じと思ふ人はありなむや=見物することをしないつもりだ・しまいと(心に)思う・考える世間の人々・万人は存在する・いるだろうか、いや、いるはずがない
をんな(おんな)
①女性・成人した女性②妻や恋人としての女性
あめれ=あ(る)+めれ=状態である+ようだ
おんなだに慕ひ参る道にこそあめれ=高齢の女性さえあとを追う道のり・行程だとあるようだ
平安文化のあれこれ
平安時代の女性は滅多に外出する機会はなかったようで、お寺や神社にお参りに行くというのが貴重な出歩くチャンスだったようです。ただ、実際には牛車に乗って運んでもらうので、本当に歩くわけではなかったのではないでしょうか。近所をちょっと散歩という習慣もなかったようなので(外を出歩くのははしたないことという考えや価値観でもあったのでしょうか。)、おちくぼ姫でなくても部屋にこもりっきりと言ってよい状態だったのではないでしょうか(おちくぼ姫の場合は、世間との関わりをほぼ完全に遮断されているようですが)。そして主人が動けばその従者も動くという感じで周囲の侍女や女房、臣下や家来などもそうした機会にしか外出したり遠出することはできなかったのではないでしょうか。もしかしたら一家の主もそうした実態をよくわかっていたので、行きたければみな行こうというスタンスだったのでしょうか。そうやってみんなが総出で楽しむイベントに、どうやらおちくぼ姫は入れてもらえない、仲間はずれのようではないでしょうか。さすがにそれはあんまりじゃないか、と心ある人が北の方に苦言を呈しても許されず、それを見越してのことだったのか、あこきは姫のために嘘も方便と出たようです。でも、どうでしょう。もし、おちくぼ姫とあこきだけが中納言邸に残るのだとしたら。いつもは人の出入りが多すぎて帯刀は右近の少将をおちくぼ姫のところに連れて行けなかったんですよね。としたら、どうでしょう。これは……。今後の展開が楽しみです。
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Ukon’no Shoushou was disappointed that Princess Ochikubo really did not know the manners for exchange of letters; however, his strong impression of her profoundly compassionate personality according to Tachiwaki prevails and he has become more attracted to the Princess, pressing Tachiwaki to arrange the secret date with her. Despite their zeal, the house of Chunagon, the father of Ochikubo-Hime, has always a lot of people in and out as three daughters have husbands coming and thus they could not find a chance to go and meet the Princess stealthily. After their irritating days doing nothing, a golden opportunity has come; the family of Chunagon would make a visit to the temple of Ishiyama to repay the wish granted and anyone including servants, maids and other workers, both young and old, may come together. In this party Princess Ochikubo is not included, which a maid called Ben’no-Okata noticed and asked Kitanokata to take the Princess with them as leaving her alone would be pitiless, but Kitanokata turned down, saying “That orpahn has never gone and should not go on such an outing. She will not be wanted on the way as no sewing will be demanded." In addition, the cold-hearted stepmother cold-bloodedly said, “Out of question for her to go out for pleasure. Be shut and left in her sunken place." So the Princess would stay behind.
Akoki was ordered to join the attendants of San’nokimi and wear a gorgeous clothes on the trip. But she thought how could she leave her precious princess alone and thus she made an excuse that she could not go due to her period so that she could stay. This intention Kitanokata saw through; “You lier! You mean to be with that orphan!" To the raging mistress Akoki retorted, “What? May I go? You say I go and I will go. This excursion every single person should long to join. Does anyone miss it? I heard even old ones are enthusiastic to go." And Akoki won over Kitanokata, who got a young maid put on the clothes which Akoki should have worn, and started.
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