Ochikubo-11

このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。

取り上げる作品は、『落窪おちくぼ物語』です。

西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。

小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。

ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。

(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)

 

このサイトで主に使用する辞書・書籍

『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)

『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)

『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)

『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)

 

なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。

https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt

 

まず今回のあらすじを紹介いたします。

その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。

今回のあらすじ

「姫はいつも身を小さくして過ごして、このような手紙にも触れたこともないのではないか。だから歌の詠み方もわからないのであろう。だが人の気持ちに寄り添う方だとお前は言うが、ならばほんの一言ですらいっこうにいただけていないというのはどういうことか」と右近の少将が帯刀を責めると、「さあ……。北の方様のいじめがあまりに激しくて『少しでも調子に乗れば目にもの見せてくれるわ』とおどされて、それでいつも不安でらして、自然こわがって遠慮ばかりされているのだとのことですが」と姫をかばえば、「だから俺を連れてけと言ってるだろ」とまた催促するので、これ以上主君の命をないがしろにもできなかったとみえ、なんとかつなぎをつけたいと様子を探っていました。
右近の少将がまた文をおくったのは十日も間があいた頃だったでしょうか。「このところ、いっそ文をさしあげるのをよしてしまおうか、だって、薄情な仕打ちがたえがたく、うらみにすら思ってしまいそうだ、とまで思いつめながらも、それでもやはり貴女から離れることなどできず、ひそかに情けないことだと一人苦しんでいます」と胸の内を告白され、帯刀もさすがに「なんとしてもお返事を殿にいただきたい。一言すらないとはおっしゃり、俺の怠慢をお疑いなのだ」と妻のあこきに頼みこむと、「『わたくしには何をどう申し上げたらよいのやら見当もつきませぬ』と途方にくれてらっしゃるものを」と姫をかばいながらも、帯刀の意をくみ姫に文を見せようと行ってみると、北の方様の二番目の娘、中の君様の夫君である右少弁様が急ぎ参内なさるのに合わせてお衣を縫ってらっしゃるところでらして、お返事はおろか文を見ていただくことすらままなりませんでした。

 

[今回の古語]

ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。

「姫はいつも身を小さくして過ごして、このような手紙にも触れたこともないのではないか。だから歌の詠み方もわからないのであろう。」という箇所の古語を取り上げます。

「いみじう物のつつましきうちに、かやうの文もまだ見知らざりければ、いかに言ふとも知らぬにやあらむ。」

いみじ(う)
不吉なので忌み避けなければならない⇒①(それほどに)程度がはなはなだしい・なみなみでない・たいそう
②すぐれている・すばらしい・りっぱだ⇒③とてもうれしい
①⇒④たいへんだ・ひどい・恐ろしい・悲しい・情けない


五感によって感知したり考えたりすることができる対象を漠然と一般的な存在として表現した語⇒①事象を形式的に一般化していう。○○というもの
②物・ある物 ③一般のもの・ふつうのもの ④飲食物・調度品・衣服・楽器など、これと明示しないでいう ⑤考えていることの内容・言うべきこと・何か ⑥人や動物を一般化していう ⑦出向いて行くべき場所 ⑧超自然的なもの・鬼神・怨霊・物の怪など

つつまし(き)
遠慮・気おくれなどしぜんに心が緊張する状態や気持ちをいう
⇒①気がひける・気おくれする ②遠慮される・はばかられる ③恥ずかしい

うち
①内部・内側・なか ②心のなか ③期間中・間 ④(数量について)範囲内・以内・以下
⑤宮中・内裏 ⑥天皇・帝・主上
⑦家の中・室内・家屋 ⑧同居している自分の配偶者・つれあい・自分の妻、夫 ⑨(他国に対して)自国・国内
⑩(儒教をほかというのに対し)仏教

いみじう物のつつましきうちに=たいそう人を遠慮される間に

見知る
①(物などを)見て知っている・わかる ②面識がある・顔見知りである・親しく接する ③見て気づく・見つける・認める ④見て理解する・物事を知っている ⑤経験がある

見知らざりければ=見知ら+ざり+けれ+ば
見て知っている・わかることを+しない+状態だった+ので・から

言ふ
声を出し、ことばを発する意。呼称や、詩歌、求愛などのことばを口にする場合に用いられることが多い
(人を・に向けて・対して)①ことばを発する・言う・話す ②称する・名づける・呼ぶ ③うわさする・評判になる ④(詩歌を)詠む・吟ずる
(人が)⑤求愛する・求婚する ⑥(動物が)鳴く ⑦(「○○といわず」の形で)○○の区別なく・にもかかわらず・でもかまわず

とも
○○ということも(柔らげたり、ふくみをもたせたりする表現)

いかに言ふとも=どのように(詩歌を)詠む・吟ずるということも

知る
ものごとについて、知識を得たり、理解したり、経験したりして、自分のものとする意
(人が何かを)①理解する・わきまえる・認識する ②経験する・感じる ③つきあう・かかわりあう
(人が)④わかる
「人に知る」「人知れず」の形で⑤(世間の人に)知られる

知らぬにやあらむ=知ら+ぬ+にや+あら+む
理解する・わきまえることを+しない+ので(あろう)か+である+だろう

 

平安文化のあれこれ

北の方はおちくぼ姫を女中扱いにしているようではないでしょうか。お裁縫は高貴な家柄の娘でも教養の一つとしてたしなみを求められたようですが、だからといっておちくぼ姫のようにほとんど仕事と化しているのは普通ではないのではないでしょうか。もしかしたら旦那さんの着る衣くらいは奥さんが作りましょうという習わしだったのでしょうか。北の方の娘はどうやらまったくお裁縫はせず、全部おちくぼ姫に丸投げのようではないでしょうか。だからといって、前回の蔵人の少将のように奥さんが作ったものではないことを知っているようなので、おちくぼ姫に作らせたものを、さも自分が作ったような顔をして旦那さんに着させるようなことまではしていなかったのでしょうか。継母の北の方は間違いなく意地が悪いようですけど、娘の方はそうした意地の悪さは(少なくとも継母ほどには)ないのでしょうか。この物語は、北の方一人がヒール役なんでしょうか。周囲の人たちは、黙認して放置しているという意味では同罪なのだろうけれど、積極的にいじめはしないという位置づけなんでしょうか。もしかしたら娘も、母親の北の方が怖かったりするのでしょうか。怖いから、母親がおちくぼ姫をいじめるのを黙って見ている、見過ごしているのでしょうか。だとしたら、実の娘も、継子であるおちくぼ姫も、どちらも結局北の方を怖がっているのでしょうか。そういえば、お父さんの中納言も(きっと間違いなく)北の方が怖いのではないでしょうか。もしかしたら北の方という人は、娘や夫であっても、他の人とそういう接し方しかできないのかもしれませんね。(もしかして、道長に似てるんでしょうか?)

 

ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。

 

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Ochikubo-Hime (Princess Ochikubo)

“Princess Ochikubo should have had no opportunity to glance at such a letter as she always squeezed herself, keeping a distance from the world. So she probably does not know how to make a poem as anyone usually does. But you said that the Princess was considerate of any persons. Then why have I not received even only one word from her at all?" said Ukon’no Shoushou, blaming Tachiwaki. “Well…. According to my wife, violent torture of Kitanokata intimidates the Princess. Actually Kitanokata throws her stepdaughter the menacing remark that Kitanokata is sure to punish her upon any slight sign of a failure to obey the rules that Kitanokata imposes on her. Naturally the Princess is scared into retiring." To this response in defense of Princess Ochikubo, Ukon’no Shoushou again demanded that his foster brother should take him to the Princess. Then Tachiwaki was not able to ignore the order of his master any more and thus watched for a chance to build a bridge between his master and the Princess in any way.
About ten days later Ukon’no Shoushou entrusted Tachiwaki with a letter to Princess Ochikubo; it revealed his real pain, saying “these days I wondered if I might as well stop writing a letter to my Princess as your cold disregard for me has been unbearable and I’m worried that I am even on the edge of harboring a grudge against you, but I cannot live without you and I’m distressed in a miserable state without anyone’s knowing." Tachiwaki begged his wife, Akoki, for any reply from the Princess to his foster brother, pleading that I have to get any answer for my master because I am doubted of my negligence as no word came from the Princess. “But my Princess is at a loss, having no idea what and how to say," said Akoki for the good of her Princess. However, considering the situation also for her husband, Akoki called on the Princess and found her busy in sewing for the husband of the second daughter of Kitanokata, Ushouben, who was required to go to the court as soon as possible, resulting in no chance for a look at the letter, let alone a reply.


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