Ochikubo-10
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
北の方のいじめが一向にやむ気配もない中、右近の少将はおちくぼ姫に初めて恋心を打ち明けられた文に続けて、次の文をススキに添えておくられました――この穂のように私の気持ちはもう貴女にもよくおわかりのことと思います。それなのになぜ、お誘い申し上げてもなしのつぶてなのでしょうか――姫は何も返されませんでした。ひと雨ごとに寒さ深まるしぐれ時には、「とても思いやり深い方だとうかがっておりましたが、私にはいただけてもよいのではないかという一言すらかけてはくださらないのですね」と訴えて、また歌をおくられました――雲で覆われた灰色の空から雨がシトシトとふりつづくさまは、まさしく貴女にお会いできる光を見いだせないでいる私の心そのものです――またもや姫は何もお返しにはなりませんでした。それでも右近の少将は重ねて文をおくられました――私はおりひめとひこぼしのように、たとえ年に一度のおうせしかかなわないとしても、必ず貴女にお会いできると信じております。どうかお返事を――こうして日をおきながら、それでもとだえることなく、恋いしたう想いにこたえてほしいと姫に歌をおくられつづけましたが、姫はいっこうに何も返されることはありませんでした。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「ひと雨ごとに寒さ深まるしぐれ時には、「とても思いやり深い方だとうかがっておりましたが、私にはいただけてもよいのではないかという一言すらかけてはくださらないのですね」と訴えて、また歌をおくられました――雲で覆われた灰色の空から雨がシトシトとふりつづくさまは、まさしく貴女にお会いできる光を見いだせないでいる私の心そのものです。」という箇所の古語を取り上げます。
「時雨いたくする日、「さも聞きたてまつりしほどよりは、物思し知らざりける」とて、雲間なきしぐれの雨は人恋ふる 心のうちもかきくらしけり」
時雨
晩秋から初冬にかけて断続的に降る通り雨。ときには雪まじりの冷たい雨。涙のたとえになったり、悲嘆のさまやわびしい境遇を象徴する景物としても使われる。
いたし(←いたく)
「甚し」=程度がはなはだしい・ひどい・激しい⇒すばらしい・はなはだしくすぐれている・りっぱだ
「痛し」=①(肉体的に)苦痛である・痛い②(精神的に)苦痛である・つらい・心苦しい
す(為)(←する)
広く行為・作用を意味する⇒
(あるものが)①生じる・起こる・する②(感じが)する
(あるものを)③○○のようす・状態を呈する④(行為・動作を)する・やる⑤作る⑥考える・決める
さも
①そのように・そうも・そんなふうにも②そのように・そのとおりに③いかにも・まったく・ほんとうに④それほどにも・たいして(ない)
聞く
①音を耳で感じとる・聞いて知る②人の言うことに従う・聞き入れる③たずねる・問う④(酒や味・香などの)味わいをためす・吟味する
聞きたてまつりし=聞いて知り申しておりました
ほど
おおよその程度や範囲を表す⇒
①(広く一般的に)程度・ころあい・ようす・ありさま・限度・くらい
(時間に関して)②(○○している)とき・うち・③ころ・時分④期間・間
(空間に関して)⑤距離⑥その場所の広さ・長さ⑦あたり
(人事に関して)⑧身分⑨年齢・年配
より
①(時間的・空間的な起点を表す)○○から②(通過点)○○を通って③(手段・方法)○○で・によって④(比較の基準)○○より・よりも⑤(範囲限定)○○より・以外⑥(原因・理由)○○(の)ために・(だ)から・のせいで⑦(即時・前の事柄が起こるとすぐに後の事柄が起こる意を表す)○○やいなや・すると同時に
物思し
言うべきことをお考えになる(ことを)
知らざりける
わきまえていないことだなあ
「ける」=気づきを表す。ある事実に初めて気づいた驚きやあらたな認識を得たということを、詠嘆をこめて判断する意を表す。
かきくらしけり
悲しみに心を暗くする・悲しみにくれてきたのだよ
平安文化のあれこれ
今回は右近の少将がおちくぼ姫を口説き落とそうと工夫をこらしたらしい和歌が三つ出てきました。恋の始まりは和歌を送るのが礼儀だったのでしょうか。大げさにも聞こえるような言い回しも多いようにも思われますが、その辺りもそれくらいの方が礼を尽くしていることになったのでしょうか。普通はそうやって男性がどの程度本気なのかを女性がはかるのでしょうが、おちくぼ姫の場合は、決して右近の少将の本気度が問題なのではなく、(たぶん)立場上というか、ただただ継母の北の方が怖くてというのが返歌を送らない理由ではないでしょうか。虐待されて監視下に置かれていて、恋愛どころではない、というのが本音でしょうか。でも、その右近の少将との結婚こそがおちくぼ姫を苦境から救う有効な手段になりそうではないでしょうか。そうなると、どんなきっかけや経緯を経てそこにたどり着くのでしょうかね。右近の少将はひたすら帯刀に、おちくぼ姫のところに連れて行け、会わせろ、と要求しているようですけど、北の方が目を光らせている屋敷ですよね。その辺は大丈夫なんでしょうか。広そうなので、わからないように(バレないように)会えるものなんでしょうか。なんだかスリリングな匂いもしますけれど、今後の展開が楽しみですね。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。次回もまたぜひお付き合いいただけましたら何よりです。またこのページの最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか。あわせてお心付けもお願いできましたらありがたく存じます。
このコンテンツはこのサイトでのみ公開いたします。
このコンテンツの著作権はすべて著作者が保有いたします。
このコンテンツは閲覧以外の利用をすべて禁止いたします。
【お願い】
このコンテンツは無料で閲覧いただけますが、このページ末尾にある “お心付け" ボタンから、ぜひお心付けをいただけませんでしょうか。100円からお願いしております。ご検討いただけましたらありがたく存じます。
また、最後に掲載いたします英語版(有料)もぜひお読みいただけませんでしょうか([注意!] 「おちくぼ物語(英語サイト)」(https://jacl-en.it-is-the-tale.com) の English version と同じものです)。(なお、毎回英語版をご購読いただいた場合には高額となるおそれがあります。またいかなる場合も返金には応じられません。またご購読いただいた英語版にご満足いただけるとは限らないことをあらかじめご承知おきいただけますようお願い申し上げます。)