Ochikubo-28
このサイトは、日本で千年余り前に書かれた物語を読んでみようという試みです。
取り上げる作品は、『落窪物語』です。
西洋では17(19)世紀に書かれた『シンデレラ』の日本の古典版といえるものです。
小さいお子さんからおじいちゃんおばあちゃんまで、老若男女を問わず、皆様にお楽しみいただけるお話ではないかと思います。
ぜひご家族で、一人でも多くの方に一緒に読んでいただけましたら何よりです。
(なお、このサイトの著作者は古文になじみがありません。現代の日本語で読み、考え、さらに英文で表現するという難題に挑戦したいと思います。また、このコンテンツはあくまでもこのサイトの著作者の解釈に基づくものであることをご承知おきください。)
このサイトで主に使用する辞書・書籍
『落窪物語』(稲賀敬二)(新潮社 2017)
『全訳読解古語辞典(第五版)』(小型版)(鈴木一雄 小池清治 倉田実 石埜敬子 森野崇 髙山善行)(三省堂 2021)
『ルミナス和英辞典(第2版)』(小島義郎 竹林滋 中尾啓介 増田秀夫)(研究社 2006)
『ニュースクール英和辞典(第二版)』(廣瀬和清 伊部哲)(研究社 2019)
なお、下記のサイトで、原文の全文を見つけました。
(https://www.komazawa-u.ac.jp/~hagi/txt_ochikubomonogatari.txt)
まず今回のあらすじを紹介いたします。
その後ピックアップした古語の意味合いを考え、平安時代の社会や文化のあり方などいろいろ考えてみたいと思います。
今回のあらすじ
「おばさま、ありがとうございました。すぐにご用立てくださり、本当に助かりました。ありがたく思っております。お礼申し上げます。重ねて恐縮に存じますが、実はやんごとない事情から、今夜お餅を用意しなければなりません。他にも果物やお菓子などもお出しできればと思っておりまして、いくらかいただけましたらありがたいのですが……。凶方を避けてのご滞在が延びることになりまして、使わせていただいております几帳など引き続きよろしいでしょうか。また手や顔を洗う容器もそれなりのものをお願いできましたらありがたいのですが……。いろいろお願いばかりで恐縮に存じますが、おばさましかおりませぬもので……申し訳ありません」とあこきはまた文を書いて送りました。
一方、右近の少将はまた姫を想う歌を贈りました。「愛しさが募るばかりで、ずっとあなたのおそばで過ごせたら、と願わずにはいられません。鏡に映る影でもいい、あなたに光り輝いていただけるのなら」とのお心に、おちくぼ姫もとうとう返歌をしたためられました。「影ではあてになりませぬね。それではいつの間にか消えてしまわれるのではないですか。そんなお方をあてにできましょうや」との粋な返しに、少将も思わず顔をほころばせ、ますます姫に心が惹かれているようです。
和泉の国のおばからすぐに返事が来ました。「あなたのお母さんが亡くなってから、あなたのことをいつも気にかけてきました。私たちには娘がおりませぬし、養女に迎えようとも思い、何不自由のないお幸せな暮らしをしていただけますようにともたびたびお伝えもしてきましたよねえ。けれどもあなたがそれを望まれず、寂しい思いをしてきました。ですから遠慮なく甘えてよいのですよ。ご所望の件、承知いたしました。好きなだけ使ってちょうだい。手や顔を洗う容器も持たせますから。でも、おかしいわね。あなたは中納言様のお邸でお仕えされているのでしょう。ならばそうした品々は当然持っていてしかるべきなのに。これまでいったいどうしていたの。ちゃんと私に言うのですよ。あなたにみじめな思いなどさせられません。遠慮なくお使いなさい。お餅も心配いりませんよ。すぐに作り立てを届けさせます。それにしても、そのお餅、もしかしたらあなた、お婿さんなの。今夜が三晩目なの。その儀式にいろいろと必要なの。本当はゆっくり会ってお話できるといいのだけれど。大丈夫かしら、心配だわ。とにかくなんでもおっしゃいな。国司のお役は何かと恵まれているそうだから、今ならいつでも力になれるわ」とまさに大船に乗ったつもりでいてよいと勇ましい限りです。
[今回の古語]
ピックアップした古語の意味合いを考えてみたいと思います。
「「愛しさが募るばかりで、ずっとあなたのおそばで過ごせたら、と願わずにはいられません。鏡に映る影でもいい、あなたに光り輝いていただけるのなら」(中略)「影ではあてになりませぬね。それではいつの間にか消えてしまわれるのではないですか。そんなお方をあてにできましょうや」」という箇所の古語を取り上げます。
「よそにてはなほわが恋をます鏡 添へる影とはいかでならまし(中略)身をさらぬ影と見えてはます鏡 はかなくうつることぞ悲しき」
よそ
①ほかの場所・遠い所・自分のいる場所とは異なる所②関係のないこと・無縁なもの
にて
①○○で・○○において②○○で・○○によって③○○として④○○ので・○○によって
なほ
①依然として・もとのまま・また②やはり・なんといっても③○○でさえ・やはり・そうはいってもやはり④同じく・同様に⑤さらに・ますます・いっそう⑥ちょうど・まるで
恋
①目の前にないもの、人、場所などを求め、慕う気持ち②恋愛の感情
ます
(増す)①増加する・ふえる②数や量を多くする・ふやす
(勝す・優す)③(他と比較して)すぐれている・上まわっている④すぐれさせる・上まわらせる
ます鏡
(ますみのかがみ)くもりなく澄みきっている鏡
添う(←添へ)
①付け加わる・(その上に)加わる②(ものが)寄りそう・(人が)付きそう③(男女が)連れそう・夫婦としてくらす④その形に従う・沿う⑤年月がたつのに従う⑥付け加える・そえる⑦(人を)そわせる・(人を)付ける⑧(あるものを他のものに)なぞらえる・たとえる
かげ
(影)①光②光によって見える物や人の姿・形③鏡や水面などに映る物の形や姿④眼前にいない人の姿・心に思い浮かべる形や姿・面影⑤光によって生ずる物の陰影・影法師⑥やつれた姿⑦影のように、実体がない状態⑧死者の霊魂
(陰)⑨光や風の当たらない所⑩さえぎられて見えない所・隠れ場所・物陰⑪かばい、守ってくれること・また、その人・庇護・おかげ・恩顧
なる(←なら)
(生る)①新たに生じる・生まれ出る・なる②植物が実を結ぶ・実る
(成る)③別のものに変化する・ある状態に達する④時が経過して、ある時刻・時期・年齢などに達する⑤ある地位や身分に就く・別の地位や身分に達する⑥ある場所や高さに達する⑦物事が仕上がる・完成する⑧(何かをすることが)できる・許される・酒が飲める⑨なさる・あそばす・お出ましになる
まし
①もし○○だったら○○だろう②○○てほしかった③○○たらよいものかどうか・○○ようかしら④○○たらよいだろうか⑤○○だろう
さる
(去る)①離れていく・立ち去る②官や位を退く③死ぬ④(距離が)隔たる⑤(時や季節が)移り来る・○○になる⑥(時が)過ぎる・移る⑦変化する⑧離す・遠ざける⑨離縁する
はかなし(←はかなく)
はっきりした目当てがない・頼みにならない⇒①しっかりしていなくて、頼りない・あてにならない②あっけない・束の間である・はかない・むなしい
②→③なんということもない・ちょっとしたことである・無益だ
①→④(思慮分別が)しっかりしていない・たわいない・おさない
うつる
(映る)①(光や影などによって水面や鏡に)ものの形がうつし出される・映ずる
(移る)②他の場所に移動する③(官職・地位が)異動する・転ずる④物の怪がのり移る⑤時が過ぎる・時勢が変わる⑥色・香りがしみ込む⑦色あせる・散る⑧変わる・変化する
かなし
思いが強く胸に迫る⇒①(愛し)強く心がひかれる・心にしみておもしろい②(悲し・哀し)悲しい・あわれだ
①→③心にしみてかわいい・いとしい
②→④ひどい・くやしい・残念だ
右近の少将からおちくぼ姫におくられた恋歌と、それに対するおちくぼ姫の初めての返歌ではないでしょうか。大前進ではないでしょうか。おちくぼ姫が右近の少将を受け入れていこうという意志の表れなんでしょうか(それとも、単に礼儀を尽くしているだけなのでしょうか)。
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“I apprecaite your kindness. Thank you for all things that you have provided. They are really helpful for us. I am deeply grateful. You are the only one that I can rely on and I was wondering if you could help us again. The inevitable circumstances require me to get Japanese rice cakes for serving tonight. In addition, I would like to provide fruits, sweets and confectionery. If I could ask you a favor, we would be able to get over the current situation. The stay to avoid the inauspicious direction that I have told you in the previous letter is going to be extended. May I continue to use the kichou and other articles that you provided? I would also greatly appreciate if you will additionally get me a basin or other container for washing a face and hands. I am fully aware that I am brazen asking for this and that one after another, but I must make good and appropriate arrangements under the circumstances which we are placed in. So even if I have to suffer shame and misery, I have no choice but to ask. With all my love and big thanks," to her aunt Akoki wrote.
Meanwhile, Ukon’no Shoushou presented love for Princess Ochikubo in the form of a traditional Japanese poem (waka): “I cannot restrain my love for you. I cannot help wishing that I could live with you close by you all the time. I am willing to be the shadow of you reflected in a mirror if you will shine brilliantly." This wholehearted love may have moved the heart of the deeply hurt sensitive heroine. Finally the Princess sent a reply of waka: “I cannot rely on a shadow. It will surely disappear. How can I trust you?" This wit made the Prince break into a smile. Her attraction drew him into her mysterious world.
Akoki’s aunt of Izumi Province promptly replied: “I have always cared for you since your mother passed away. We do not have daughters and we have offered to adopt you for your comfortable happy life over and over again, which was turned down resulting in our disappointment. So we always welcome any requests from you. You can depend on me for the things and matters of your request in your last letter. You are free to use the items already provided. I will send a basin for washing a face and hands. I feel it is strange that if you should not have those necessities as you work in the house of Chunagon. I wonder why, and how you have done without them. You must tell me anything at once. I cannot let you leave in a miserable condition. Feel free to use it and others. You can be assured that you will have Japanese rice cakes. I will have them made and delivered to you quickly. Speaking of rice cakes, you may take a husband? Is tonight the third night spending together with him? And so you need the things requested for the ceremony? I wish I could meet and talk with you taking much time. I will do anything for you anytime and I always pray for your good health and happiness. I always wait for you and stand by you. I hear that the officer of province enjoys more pay than general. I can help you while my husband assumes it. Great love and best wishes." The dependable aunt gives sense of safety, courage and support, both phisically and mentally, to her dearest niece, Akoki.
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